「不動産テック」がうまくいかないと思う理由

不動産の世界にも、ITインフォメイションテクノロジーを取り入れようとする動きが広がっているようです。「不動産テック」と呼ばれる分野ですが、私は不動産とITの相性は、あまり良くないと思っています。

写真AC:編集部

確かに、ブロックチェーン技術を使って不動産の登記を電子化する。あるいは定型化された不動産取引の事務管理作業を自動化するといったサービスには、価値があるかもしれません。

しかし不動産売買の世界は、未だにテクノロジーでアプローチできないアナログな世界が残っているのです。

例えば、AI(人工知能)によって、不動産の取引情報の蓄積から物件の実勢価格が自動的に計算されるサービスがあります。周辺の取引事例をデータベース化し、それを使って価値を推測する手法です。取引事例が豊富にあれば、それらとの比較から不動産価格を推測するのは可能です。

問題は、金融資産と異なり不動産の場合、データを取得するのに大きな困難が伴うことです。

株式や投資信託のような金融商品は取引データが公開されて、正確な数字が入手できます。これに対し、不動産取引の多くは未公開物件で、取引は売り手と買い手の相対で行われ、取引情報は一般公開されていません。

また、取引価格も現金取引で割引があったり、交渉で値段が変わったりと数十万円単位で変わってくることも珍しくありません。

これらの不動産情報が全て反映されれば、人工知能が瞬時に査定することが可能です。しかし、インプットが不十分であれば、アウトプットも正しく出てこないのです。

資産デザイン研究所で開催している不動産投資セミナーで紹介される物件も、販売会社が売主となる一般公開されていないものです(写真は、資産設計実践会の説明会&ワークショップ)。

セミナーに参加した人だけが、情報を得られる「お宝物件」も存在します。これらはネット上などで一般に知られる事は無いのです。

情報に「歪み」のある実物資産は、積極的に情報を取りに行くことによって超過リターンを得ることができます。

残念ながら、不動産テックにはこのような業界の取引慣習を突破できない限界があるのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。