処方せんを廃止すれば、薬局・薬剤師などは廃止できる

井上 晃宏

少し前にアゴラで

「薬剤師はすでに形骸化した職種であり、専門技能がないのに、高額のフィーをもらっている、けしからん」

という投稿があいついだのだが、薬剤師には、まだ、専門技能が残っている。

神奈川県薬剤師会より

処方せんを読むという技能だ。

外来あるいは往診で処方せんをもらって、薬局に持ち込んだ人は多いと思うが、内容を確かめた人は少ないだろう。

処方せんには医師の書いた「処方」が書いてあるのだが、処方の記載方法には、はっきりした決まりがない。

ここに、薬剤師会が推奨する記法があるが、いくぶんあいまいなので、機械で自動で読み取ることができない。また、電子カルテ入力ならば、それほどブレがないが、医師による手書き処方せんもある。

いい加減で不完全で下手な字で殴り書きされた処方せんを医療的常識で補完して読み、かつ、そもそも医師が間違えている処方をも、薬剤師は疑義照会で訂正させねばならない。

しかしながら、処方せんがフリーテキストだから、こういうことがおきるのだ。

Amazonなどの通販サイトでは、厳格なフォームに入力させるので、出力される情報の意味は一意に決まり、ピッキングは素人でもできる。

写真AC:編集部

医師が処方入力を間違えても、大半は機械で訂正できるだろう。むしろ、人が訂正するよりも機械で訂正する方が、よほど確実で間違いが少ない。電子カルテが入力ミスを防げていないという批判がありそうだが、システムの能力は、システム設計にどれだけ金と手間をかけるかで決まるのである。各ベンダがほそぼそと作る電子カルテと、Amazonなどの通販業者のサーバとでは、使える資源は比較にならない。

通販サイトで、医師が医薬品宅配注文を行うことで、処方せんは廃止され、それを読み取る薬剤師の技能も不要となり、薬剤師を養成する薬科大学も不要となる。

井上 晃宏(医師、薬剤師)