4月30日に放送された NHKスペシャル『日本人と天皇』、またその内容をヤフーニュース個人で紹介した元日本テレビディレクター・水島宏明氏の記事「改元特番でNHKだけが伝えた”不都合な真実”」がきっかけとなり、ネット上で皇位継承をめぐる「男系か?女系か?」の議論が巻き起こっている。
水島氏が”不都合な真実”と呼ぶ番組の要点は、「男系」(父親か祖父などが男性)を条件とする「皇位継承」が、「側室の存在」に大きく依存していたということ。
これまでの125代におよぶ天皇のうち、約半分が「側室」(第2夫人、第3夫人など)の子と見られている…過去400年間では側室の子どもではない天皇は109代の明正天皇、124代の昭和天皇、125代の前天皇(今の上皇陛下)の3人のみ
この点を踏まえ番組や水島氏は、「側室という制度のない現代では『女系天皇』(母親のみが皇統に属する)を認めない限り、象徴天皇制は自然消滅してしまうのでは」と問題提起したのである。
一方、アゴラでおなじみの八幡和郎氏は、「皇位継承候補者が少なすぎる」ことには以前から警鐘を鳴らしつつも、「いまは冷静な議論をするのにふさわしい環境ではない」「公平さを欠いていた」「その時々の君主との関係が深い人へルールを曲げて継承させるのは邪道」などと番組には批判的な立場を示す。
いま議論をすることが、お祝いに水を差すのも問題だが、冷静な議論をするのは、ふさわしくない環境だ。
全体的に不公平で男系論に対するイメージダウンを狙った方向性をもった番組だった
私は多くの保守派と違って女系の継承を全面的に否定はしていない。ただし、従来のルールでの継承を可能にする努力もせずにというのはおかしいとしている。私は男系、女系、合わせ技のすべての可能性を探り100人程度は候補者を確保すべきだとしているし、具体的な方法も提案している。
アゴラ執筆陣で元内閣官房副長官の松井孝治氏は、八幡氏と同様に公平性を欠く番組手法を批判しながらも、神官としての天皇陛下にスポットを当てたことや問題提起自体は評価し、具体策として旧宮家の復活を提案。
基本的な構成、映像の切り取り方にバイアスというか、NHKスペシャル特有の臭いは感じましたが、三笠宮殿下の貴重な音源、石原・古川両元官房副長官へのインタビューなどで、この番組の表題『日本人と天皇』の本質は浮かび上がっています。
NHKが今回、神官としての天皇陛下にスポットを当てたことは、そのことをご存じない多くの国民に、国民の安寧を祈られる陛下の実像を伝える意味で意義があったと思います。
…(平沼元議員は必ずしも体調が万全とは思われないのにその言い淀みの部分をそのまま使われていたり、集会中万歳三唱の部分を使用されていたりしたのは番組編集の意図を感じました)、折角の好企画なのに、フェアネスの面で画竜点睛を欠いていたのではないかと残念に思いました。
皇位の安定的継承を確保するためには、旧宮家の復活が残された極めて限られた解決策であることは論を俟たないと思います
リアリストの立場からは、元大阪府知事の橋下徹氏が、直接番組にたいしてではなく、関連する共同通信の世論調査についてではあるが、「女性のプレッシャーについて無頓着であることをやめ、現実論で議論せよ」と提言。
アゴラ執筆陣で衆議院議員の長島昭久氏は、「問題の核心は、天皇が女性であることではなく、我が国皇統の根幹を断絶してまで「女系」の皇位継承を容認すべきか否かでは」と指摘した。
ネット上では、「男系か?女系か?」の話をサザエさんで例えた説明や、
女性天皇ではなく「女系天皇」に強く反対する声が相次ぐ一方、
「女系天皇」にも賛成と思われる著名人による水島氏記事の共有がツイッターで反響を呼んでいたり、
「いずれにせよ皇室典範改正は必至では」という意見も聞かれた。