私たちが外来医療を受ける場合、大半が慢性期治療における継続処方である。
いわゆるDo処方だ。
医師は患者を「診察」したことになっているのだが、かなり形式的で、診察は顔を見て話をするだけでおしまいということも多い。昔は、「おくすり外来」という箱が受付に置いてあって、そこに診察券を入れると、医師は患者に会うことすらなくて、受付に薬だけが出てくることがあった(違法である)。
しかし、これがもっとも合理的だったのである。
薬の継続処方をしてもらうだけだったら、診察はいらない。いつも処方されているのと同じ薬を通信販売で買えれば、それで十分ではないか?繰り返し使用できる処方せん、リフィル処方せんが検討されているが、まだ認可されていない。
政府が要処方箋薬の無診察販売は禁止しているはず…というのは原則であり、例外がある。
医薬品個人輸入だ。
個人輸入といっても、自分で海外サイトにアクセスして買う必要はない。日本語で日本の業者が個人輸入を代行してくれる。
いつも処方されているのと同じ薬を輸入できたら、定期的に外来に行く必要はなくなる。厚労省が、いくつか制限をつけた上で、個人輸入を許可しているのだから、堂々と買っていい。
医療保険は効かないから10割自己負担だが、医師や薬剤師のフィーはかからないので大して高くないし、何よりも、仕事や学業を休んで診察を受けに行く必要がない利点は大きい。
自分が処方されている医薬品を調べる気もないし、病名も服薬の必要性も考えたくない、個人輸入サイトなんて慣れないものは使いたくないという人は、仕事を休んで医師の診察を受けて診察料を払い、薬局で薬剤師に調剤料を払って薬をもらわねばならない。
個人輸入薬による医療とは、言わば、格安スマホのようなものだ。
店舗で手取り足取り教えてくれることはないが、余計なサービスもなくて、価格が安い。
医薬品の品質保証はないし、副作用被害に遭っても、相手は海外の会社だから、民事賠償請求は難しい。
情報強者のための医療なのだ。
通常の外来医療は、情報弱者のためにある。
どちらを選ぶかは本人の自由だが、自己責任である。
どちらを選ぶかは本人の自由だが、自己責任である。
井上晃宏(医師、薬剤師)