いささか誇大妄想的、扇情的なタイトルになりますが、結構真剣にそう考えています。私は30余年の大手電力会社とアジア開発銀行でのサラリーマン生活に2年前に区切りを付け、電力のP2P取引を実現するために株式電力シェアリングを起業し、今年で3期目になりました。
エンジェルやファンドの後ろ盾もなく、手持ち資金でスタートしましたが、おかげさまで良い仲間に恵まれ、2期目は売上高も1億円を超え、単年度黒字を達成しました。そして、令和の時代に入り、いよいよ電力のP2Pのサービスインが手の届くところまで来ています。
昨日の記事「日本がGAFAに勝てると思う訳。例えばDENAのエニカ」では、IT革命第二章、モノのインターネットの時代が到来し、交通分野では、CASEすなわち、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電気自動車)、そして、MaaS(サービスとしての移動)実現に向けた競争が既に激化していることをご説明しました。
このCASEの大波は電力分野にも当てはまり、業界の絵図を大きく塗り替える可能性を秘めています。住宅の屋根に置かれた太陽光パネルで発電した電気を固定価格買取制度(FIT)によって中央の電力会社が買い取るのではなく、近所の家庭におすそ分けしたい。
経済学的には、電力分野における規模の経済が薄れ、分散型の電力システムの相対的優位性が生まれつつあります。ITによるデジタル化・データ化がそれを可能にします。ブロックチェーンも役に立つでしょう。今年の10月にはFIT切れ住宅が40万軒一気に出現し、こうしたニーズが顕在化します。
電力業界を所管する経済産業省資源エネルギー庁の動きも機敏です。次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会が2018年に立ち上げられ、昨日(2019年5月10日)の第7回会合では、以下のようなP2P取引導入の是非について闊達な議論が交わされました。
私はそのライブ配信をYouTubeで拝見していましたが(何と高い透明性)、慎重な意見と前向きな意見が自由闊達に出され、見事な議論でした。
慎重派の主張は、概ね以下の3点でした。(1)消費者保護(どれだけ取引したか正確に計量するのが大事)、(2)公平性の担保(託送料金の負担逃れにつながる)、(3)系統安定の確保(P2P取引が広まると、売りと買いを合わる(同時同量)責任逃れにつながる)どれももっともな主張です。
一方で、積極派の主張は、以下の2点でした。(1)P2P取引というと、単純に家庭の間の電力を分け合うイメージだが、実は電気自動車を使った需給調整や、電力システムのデータ化・デジタル化の大きなイノベーションをもたらす可能性を秘めている(私のいうところの電力のCASE化)。(2)欧米では実際にこうした動きがあり、日本がのり遅れてはいけない。
実際、英国ではローカル・エネルギー・マーケットという名前のP2P取引での事業がスタートしています。
そこでは、100個の家庭用蓄電池と太陽光パネルによって、系統を通じて相互に取引を行います。また「系統の需給に一個の家庭レベルが柔軟性(フレキスビリティ)を与えます。この事業は最先端の技術を実証するというよりも、マーケットプレス(取引プラットフォームを前提として)をもたらすものです。
The local energy markets being developed in the U.K. go beyond most current transactional microgrid concepts, which may allow for electricity trading but usually only on a peer-to-peer basis.
In contrast, Centrica is leading a pilot in Cornwall (in southwest England) that could pave the way for transmission and distribution system operators to source grid flexibility services directly from end users, including residential customers.
While new energy trading platforms are being piloted across the world, “international projects are more about testing technology than they are about creating a marketplace,” said Mark Futyan, distributed power systems director at Centrica, the British utility and global energy giant.
何れにしても日本政府がここまで迅速に、また透明性の高いオープンな対応されるのを見て、大変感銘を受けました。実はP2P取引の本質は、カーシェアリングと同様、既存のアナログな電力システムをCASEに変革するための起爆剤です。そこを見誤ると木を見て森を見ずの議論に陥りかねません。
恐らくGAFAもそこを狙っていると私は見ています。交通分野でのCASEと同等かそれ以上に重要なデータ覇権争いです。
ここは、欧米に見習って、サンドボックス方式でも良いですから、多くのベンチャーや大手電力のソリューションを競わせて、日本でイノベーションを開花させるべきではないでしょうか。我が株式会社電力シェアリングも競合に負けぬよう、独自のビジネスモデルを打ち立て、サービス・インに向けて研鑽を積んで参ります。
酒井 直樹
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