ビットコインをはじめとする仮想通貨はそれが財産的価値を持つものである以上、政治資金としても活用される可能性があり、世界では現在、この点について真剣な議論が為されるようになっている。
米国では2014年5月に連邦選挙管理委員会(FEC)が指針を発表し、候補者の支援団体等はビットコインを政治献金として受け取ることができるとした。しかし、これはあくまで法的拘束力のない指針であり、仮想通貨による政治献金の受領を認めているコロラド州、それを禁じているカリフォルニア州やノースカロライナ州、議会・行政庁・裁判所等で検討が続けられているその他多くの州等、各州で実際の判断は異なっている。
台湾では昨年、台北市議会の候補者であった蕭新晟氏が匿名の寄付者からビットコインで政治献金を受け取り、これを受けて仮想通貨と政治資金との関係性について法制度の在り方を含めた議論が続けられている。またカナダでは本年10月の総選挙に向けて中央選挙管理委員会が仮想通貨による政治献金について協議を開始することを公表している。
日本においては、今までのところ、仮想通貨と政治資金との関係性について公式な議論は始まっていない。
昨年のコインチェック事件で一時社会的な懸念が広がったものの、現在でも日本円がビットコイン取引で最も使用される法定通貨の一つであることから明らかなように、我が国は未だ仮想通貨大国の位置にあると言ってよい。既にpolipoliのように独自トークンを政治家に付与できる機能を持つサービスも出てきており、このような動きに対処するためには、2017年の改正資金決済法で世界に先駆けて仮想通貨取引を法的に位置づけたように、政治資金の分野でも仮想通貨の台頭を見越した制度整備が必要であろう。
論点はいくつかあるが、第一にはその匿名性である。誰からの献金なのか究極的には追跡不可能であることは、透明性が求められる政治資金においては特に問題である。諸外国では献金に上限を設けて、それ以上の献金が匿名で為された場合は慈善団体等に強制寄付される等の制度的措置が検討されており、我が国でも参考にして良いだろう。
また相場の過度な変動性も問題とせざるを得ないが、これも法定通貨による限度額の設定を軸に、様々な方策が選択肢となり得るだろう。仮想通貨を用いた新たな資金調達手法であるICOについては金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」が昨年末に報告書を公表しているが、これをベースに、公職候補者やその支援団体がICOを行うことも想定した論点整理が為されてもよいだろう。
時代が変化している以上、政治制度もそれに柔軟に対応することが求められると言える。
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蒔田 純(まきた・じゅん)弘前大学教育学部 専任講師
1977年生。政策研究大学院大学博士課程修了。博士(政策研究)。衆議院議員政策担当秘書、総務大臣秘書官、新経済連盟スタッフ等を経て現職。jun.makita.jun@gmail.com