メキシコ制裁関税発動で、痛手を負うのはミレニアル世代?

トランプ大統領、またやってくれましたね。2018年11月に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に署名し、2019年5月17日にはカナダやメキシコでの批准を推進するため、鉄鋼・アルミ関税を撤廃したかと思いきや、メキシコ制裁関税発動に取り掛かるとは・・。通商交渉中の各国も、驚愕したことでしょう。

ホワイトハウスの声明によれば、メキシコが不法移民強化策を講じなければ、6月10日から5%、7月1日から10%、8月1日には15%、9月に20%と月ごとに5%ずつ引き上げ、10月には25%となる見通し。メキシコの輸出の約8割が米国向けとあって、ロペスオブラドール墨大統領の他、頭を抱えているのは各国企業と米消費者に違いありません。

特に対中追加関税発動を経て、メキシコに移転する計画を立てていた一部企業には、さらなる逆風が吹き付けること必至。例えば、ウェラブルカメラ製造大手ゴープロのほか、スマートホーム・テクノロジーをリードするユニバーサル・テクノロジーなど米企業だけでなく、使い捨て食器メーカーのFuling Global、日本でもお馴染みの家電メーカーのハイセンスなどもメキシコへの進出を決定していました。

ハイセンスの場合、500万〜1,000万ドルをメキシコのロサリト市に投資する予定だったのですよ。カリフォルニア州サンディエゴに程近い太平洋側の地の利を活かしつつ、2020年までに従業員を1,200人から2,500人へ引き上げ、TVスクリーンの生産を約2倍の500万枚とする方針を掲げていましたが・・追加関税引き上げとなれば計画見直しに直面するはずです。

企業活動以外の注目は、米消費者へのインパクトでしょう。特にアボカドが大好きなミレニアル世代にとって、9割近くをメキシコ産に依存するだけに、5%の追加関税でもアボカド・トースト小売価格にその分が上乗せされかねません。

ジョークはさておき、2019年にベビーブーマー世代を抜き全米で最大の人口に踊り出る上、家庭を築きつつあるミレニアル世代にとって深刻な問題は、自動車と考えられます。

(作成:My Big Apple NY)

米国販売向け乗用車のうち、メキシコで組み立てられる比率はフォルクスワーゲン(VW)が46.4%と最高だったほか、RAMなどブランド売上トップ10常連を抱えるフィアット・クライスラー(FCA)で25.8%GMが続いて24.3%でした。1台当たり平均値上げ額は1,300ドルとの試算もあり、自動車買い替えに二の足を踏む世帯が増えないとも限らず。ただでさえ新車販売台数は足元減速中であるというのに、メキシコ制裁関税が発動すれば、売上ペースが一段とスローダウンしてもおかしくありません。FF先物市場で100%近く利下げが織り込まれるのも、致し方なし?

(カバー写真:ITU Pictures/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。