6月6日の日経新聞は、「投資額、GAFAの影薄く 『リアル』業種が上位に 」と題した記事を掲載しました。以下その引用です。
世界の企業が投資を増やしている。工場建設のための土地の取得や設備など伝統的な投資に加え、M&A(合併・買収)による投資が盛んだ。投資支出の上位は通信や半導体、自動車など現物の資産に投資する「リアル」の業種が並び、世界の稼ぎ頭であるアップルなどGAFAの影は薄い。一番稼ぐ企業群の投資の少なさからは世界的な資金余剰が透けて見える。
これは大変重要な記事です。GAFAは他企業に比べて投資額が低い。記事では、ITだからお金がかからないとしていますが本当にそうかなと思います。
今はIoTの時代です。モノづくり企業はIT化を図り、IT企業はモノづくりに励まないと生き残れません。そこでGAFAの設備投資が低いということは、何にどうやって投資すればわからないのが一因かも知れません。
IT時代を制したものが、IoT時代を制するとは全く限りません。精々、少しの先行者利益がある程度です。
よく中国と米国が株式時価総額ランキングを独占して、日本が凋落したという言説を耳にしますが、株価は、たかだか半年程度の先読みしかできません。株価純資産倍率(PBR)が異常に高いIT企業は、それだけ高転びする可能性も高いのです。
一方で、モノづくり企業のIT化はものすごい勢いで進化しています。例えば、現在の自動車は、自動車での使用を前提に開発されたシリアル通信プロトコルCAN通信を介した車載ネットワークを利用し、車両全体のECU (Electronic Control Unit)間通信を行っています。
私もつい最近まで、自動車のアクセルとブレーキペダルを踏むと、エンジンやブレーキパッドに機械的に繋がって、伝わって動作していると思っていたら、そうではなくて、電気信号で指令を送っているのだと聞いて仰天しました。本当はペダルなど要らなくて、ちょっとしたスイッチなどで十分なのだけれど、運転手が戸惑うからペダルを置いているだけなのだそうです。いつのまにか、自動車はITのお化けになっています。
少し前までアナログだった電力もそうです。例えばバーチャルパワープラントといって、何千何万の家庭に置かれた蓄電池を束ねて電気が足りなくなったら、一斉に放電する仮想発電所はもう実用段階に入っています。電力システム自体がコンピューシステムになりつつあります。
IoT時代黎明期の今は、IT時代黎明期の89ー93年ごろによく似ています。ウエブブラウザをほぼ独占したネットスケープはいなくなりました。最終的に誰が勝つかは全くわからないし、日本企業が挽回する可能性だって大いにあるのです。マラソンで言えば、まだ競技場を出ていないくらいの序盤です。
一つ言えることは、インターネットは冗長性が有って、多少途切れてもベストエフォートで済まされていたけれど、IoTで車や電気を動かした時、何十万分の一の確率で人が死ぬのです。
その本質的な違いを喝破した株式会社経営共創基盤の冨山和彦CEOは、ITはカジュアルの時代、IoTはシリアスの時代と名付けました。
そこでの勝利の必要条件はまさに設備投資です。設備投資なしにシリアスなサービスを提供できるわけがなく、「正しい」基礎的分野に「正しく」設備投資をしていくことです。企業の不断の努力が求められています。
株式会社電力シェアリング代表 酒井直樹
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