日産のカルロス・ゴーン前会長を巡る事件は、前会長が4月下旬に2度目に保釈されて以降、世の中の関心が薄れていた感はあるが、ここにきて前会長との“権力闘争”を勝ち抜いた西川広人社長の前途に再び暗雲が立ち込めようとしている。
中でも、この週末、注目を浴びたのがゴーン前会長とともに逮捕・起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告による「暴露」発言だ。ケリー被告は、きょう10日発売の『文藝春秋』のインタビューに応じ、「私は完全に無罪だと申し上げます」と、起訴事実の「報酬隠し」を否認したことが明らかになった。
文春オンラインが9日に配信した「予告」記事では言及されていないが、共同通信は9日朝、ケリー被告が『文藝春秋』のインタビューで、西川氏が6年前に自宅を一時的に会社の資金で購入するように依頼してきたことを述べたと報じた。最終的には実現しなかったというが、この事実関係について、西川氏や日産サイドのコメントはこの日深夜まで報道されず、取材対応はしなかったとみられる。
しかし、日産サイドは、ゴーン前会長の海外での高級物件購入や、投資損の補填などを「私物化」と批判した経緯があり、ネット上ではケリー発言について、
日産は西川の行為もしっかり社内調査を実行しないと筋が通らないよね。
という指摘や、
西川社長、同じ穴のムジナですね。検察がなぜ逮捕しないのか疑問です。
などと辛らつな意見も出ていた。また、日産ユーザーのネット民から
これが本当なら情けない。オレの愛車のスカイライン○○(※原文では車種名)が泣いてるぜ。
と嘆く声も。
一方、西川氏のケリー被告への提案が、費用は毎月会社に返済し、退職時に残金を支払うとの内容だったことから、
事実だとしても、返そうと思わないゴーン氏とは話が違いませんか?
とケリー氏を批判する意見もみられた。
一方、西川社長をめぐっては、ゴーン前会長が起訴された際に、ゴーン氏が退任した後の報酬の支払い名目などを記載した書面に署名していたことが判明していたものの、検察は4月下旬に「嫌疑不十分」として不起訴処分にしている。
これについて都内在住の男性は先週4日、検察審査会に不服の申立を行なったが、男性の代理人を勤めるのがアゴラでもおなじみの郷原信郎弁護士だ。郷原氏は申し立て手続きの直後にアゴラにも寄稿した。
日産西川社長に対する「不当不起訴」は検察審査会で是正を(アゴラ 6月4日)
この中で郷原氏は、
私は、「退任後の報酬」についての有価証券報告書虚偽記載罪の成否には重大な疑問を持っており、西川氏についても犯罪の成立を肯定するものではない。
としながらも
少なくとも、直近2年度分については、ゴーン氏・ケリー氏と法人としての日産を起訴する一方で、西川氏を代表取締役社長として自らの名義で有価証券報告書を提出した西川氏を「嫌疑不十分」の理由で不起訴とすることは、検察官の処分としてあり得ないものであり、西川氏も同様に起訴して、裁判所に有罪無罪の判断を委ねるのが当然だ。
などと不起訴処分に強い疑念を示した。そして不起訴処分の理由が明らかに不当であるとし、「告発等があっても不起訴処分とすることを条件に、日産の社内調査結果を検察に情報提供し、捜査に全面協力する合意があった疑い」などと“ヤミ司法取引”の可能性も指摘した。
郷原氏がこの関連でツイートしたのに対し、支持するフォロワーからは
西川氏の責任あるよなと思っていましたので、溜飲が下がる思いです。
日産の西川社長の不起訴はガバナンスに知識のある多くの人の常識に反する。郷原弁護士に検察審議会審査に関与していただき透明性が高い議論と法的に納得できる判断がなされることを期待します。
などの意見が寄せられていた。
日産の定時株主総会が2週間後に迫る中、今後も関係者による情報戦や激しい駆け引きが繰り広げられそうだ。