右派も左派も気を揉む「香港デモ」
twitter上を流れていく香港デモの模様、負傷者が出たなどの情報に心穏やかではいられません。それは、私のような右派だけでなく、左派の皆様もそうではないでしょうか。
お互い、「穏やかでないところ」の文脈は違うかもしれません。右派は「反中国」、左派は「市民が立ち上がった」点に重点を置いて、デモの模様を眺めていることと思います。
それぞれ、注目しているところは違う。しかし「北京当局の介入、香港警察の市民に対する横暴な振る舞い」を許さないという点では一致している。まずはそれでいいのではないでしょうか。
twitterを見ていると、この件に触れている方々の中には、どうしても「日本国内の相手方(つまり右派なら左派、左派なら右派)に何か一言言ってやりたくて仕方ない」状態になっている方もいるようです。
でもどうなんでしょう。今この時は、ともかくも香港の人々の覚悟を見届け、どうか天安門の再来とならないように祈り、国際社会の監視の目としての役割を果たす。右であれ左であれ、この件に関してはまずはこのスタンスでお互いに良しとしませんか。
それとも、この心穏やかではいられない香港デモさえも、隣にいる「右派/左派」を叩くための道具にしますか? それって、何よりも香港の方々に失礼では?
どうしても相手にマウンティングしてしまう
有名で発信力のある方なので、申し訳ないと思いつつ例として挙げさせてもらいますが、ウーマンラッシュアワーの村本さんはtwitterにこう書いています。
これを応援するやつ。民衆の声を応援するなら日本の国会前のデモ、沖縄の座り込み、原発反対運動、中国政府と同じように日本政府に恐怖を感じてる日本人の声も大事にしろよ、おれも中国恐怖繋がりで応援するなよ、権利に蹂躙されてる人は日本の中にもいるぞ
正直、「論敵になんか言ってやりたくなる」気持ちは(どちらのスタンスから、どちらに向けて言うかはそれぞれとはいえ)よくわかります。
かくいう私も、今回の件を沖縄を引き合いに出してツイートをしてしまいました。
香港のデモに心をかき乱される思いなのは、右派の私でも、左派の方々でも一緒だと思います。だからこそ、「あのようなことが沖縄で起きないようにしなければならない」。(以下略)
が、これでは本来、香港の状況を「どうか惨劇に至らないように」と見守っている人のうちの一部を「敵」として遠ざけてしまう。
村本さんと私の元々のスタンスは、本来はほぼ対極にあるといっていいでしょう。しかし、「香港の事態を、どうか悲劇が起こらないでほしいと思いながら見守っている」点ではそう変わらないはず。ならばひとまず余計なことは言わずに、「中国よ、香港で悲劇を起こしてくれるな」という一点でなら一致できるのではないか。
であるならば今は、(香港のデモがまさにそうであるように)ワンイシューのみで考え「中国よ、香港に手荒な真似をしてくれるな」という一点に絞れば、右も左も一致できる。沖縄ももちろん重要な論点ですが、香港に絡めた文脈で語るのは、香港の事態が収束してからでもいいのでは? 論点を広げると、「香港については一緒だけど、沖縄については別だわ」となって結束は解けてしまいがちです。
ましてや「自分とは違うスタンスの(ムカつく)やつらへのマウンティング的言及」は要らない。「香港を応援すること」にも実は責任が伴うのですが、香港の人々のまさに決死の覚悟を、マウンティングの道具にしていいわけがない。実際のところ私自身も、先のツイートから一晩たって反省したものです。
右と左が「共闘する」経験を
日本では戦後長きにわたり、右と左(保守と革新)は相容れず様々な論点で対立してきており、その溝は深まりこそすれ、埋まることはありませんでした。それこそ私自身、「向こう側」である朝日新聞についてはなかなか怒りのこもった記事なども公開してきました。
しかし、今の香港については朝日新聞の社説も、方向としては私も一緒です。右も左も香港の情勢の行方に心穏やかではいられない。その点では同じ方向を向いているのです。
その動機が、右派のような「反中国」であれ、左派のような「人権意識・市民意識」であれ、少なくとも「中国の横暴を許さない」という点では、途中までとはいえ一緒ではないでしょうか。そして、香港の自治を守るために「自由陣営」の国民として何ができるのか話し合うことくらいは可能なはず。一帯一路へ近づきつつある日本政府の対中政策を共に批判することもできるかもしれない。
なお、日本の右派と左派は、きっかけが「香港デモ」という他人のふんどしなのは恐縮ですが、この機会に「(動機はともかく)目的において一致できる論点では共闘する」体験をしてみるのもいいのではないかと思うわけです。この経験があれば、国内外で硬直化したまま山積みになっている様々な問題を議論するのにわずかでも役立つのではないか、と思い始めています。
※noteにて「香港を応援すること」にも責任が伴う点などを補足した文章を公開しています