当たらない五輪チケット:公的大会なのにマーケティング手法でいいの?

西村 健

「あたらない」
「全滅」
「まさか1つくらうはあたるかと・・・」
「もし全部当たったらお金足りないなあと思っていただけど・・・」
「やっぱり当選確率1%」

いう悲嘆にくれる国民が多かった、東京五輪・パラリンピックチケットの抽選。
筆者も同様、あれだけ応募してあたらないことにびっくりした。周りの方で当選した方は本当に少ない。

公式チケット販売サイトより

“上級国民”っぽい友達ですら外れていたようだし、「抽選申込に必要なTOKYO 2020 IDの登録数は750万を突破!」と公式Facebookにはあるので、それなりに抽選における公平性は高いと感じられる。

あたらない理由は明らか?

なぜあたらなかったのか?を知りたかったので、前提情報である

・売り出した枚数
・倍率
・具体的な抽選方法

を知りたいと思った。それがわかればなんとなく納得もいく。

その情報を教えてもらいたくて色々なところに連絡してみた。
公式Facebookの事務局が投稿した写真(下記)に「枚数、倍率、抽選方法などを教えていただけませんか?????」とコメントを入れたり、メールで確認したが…

公式チケット販売サイトより

今のところ、返事は全く来ない。

実際のところどうなのかを簡単にシミュレーションしてみようか。

・総数1000万枚(といわれている)
・抽選申込に必要なTOKYO 2020 IDの登録IDが750万
・ID1つで平均4チケット応募 【仮定】

となると「のべ3000万応募」になるので、これだけでも3倍。

チケットは

・スポンサー関係者枠
・海外含めたスポーツ団体配布枠

等を考えると倍率はもっと厳しくなるだろう。当たらなくて当然…なのかもしれない。

マーケティング戦略、でもそれでいいの

スポーツマーケティングの専門家で大学教授の知人からの情報で

最初の当選率を意図的に低くして「飢餓感」を煽った、つまり、当たらないと欲しくなる、話題になって—という純粋にマーケティング発想

で行われているのではないかという指摘を受けた。その戦略はさすがとも思う、売れ残るわけにはいかないし、最大限収益を上げる必要があるある。

しかし、五輪って芸能人のコンサートとは違いません?

東京五輪・パラリンピックは

・かなりの公的資金を投入する
・行政職員の相当の業務時間を割く
・建設されたスタジアムなどの維持管理費が後々もみなくてはいけない
・五輪招致について政治的な争点になったことはない

という「イベント」である。なので、マーケティング的な視点でやるにしても、何かしらの納得いく方法が必要だろう。ロンドン五輪では市民にあたるような配慮をしたと言われている。

マーケティング的な視点で運営されるための条件

マーケティング的な視点で運営されていいとは思う。仕方ない。しかし、条件がある。

公共性の高いイベントだけに、後々でもいいので、

・売り出した枚数
・倍率
・具体的な抽選方法

などはどこかの段階でオープンにしてもらいたい。

思うところあって署名キャンペーンを開始してしまいました(笑)が、令和の最初の公的な世界的なイベントでもある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に期待したい。

西村 健
日本公共利益研究所 代表・主席研究員