選挙が近づいてきて、政治家のみなさんがバラ色の約束をするようになりました。中でもわかりやすいのは、山本太郎さんの「消費税の廃止」という公約ですが、8%の消費税をやめると18兆円の財源がなくなります。
国民年金(と基礎年金)の財源は半分、消費税から出るので、消費税をなくすと年金が減ります。年金について彼は何も語りませんが、年金財政の赤字をどうやって埋めるつもりなんでしょうか?
山本さんは国債で埋めればいいといっています。彼の話では「国の借金はあなたの借金ではなく資産だから問題ない」そうです。これはまちがいではありません。
国債は政府が日本国民から借りるお金ですから、国としては得も損もしません。日本を一つの家庭と考えると、お父さんがお母さんからお金を借りても、家の中でお金が動くだけです。
でも国債を将来返すときは、増税しなければなりません。家の中でいうと、お父さんがお金を使ってしまって、お母さんに返すお金がないので、子どものおこづかいを取り上げるようなものです。
このときも家としては得も損もしませんが、お父さんは消費でき、お母さんは貸したお金に金利をつけて返してもらえるのに、子どもはおこづかいが減るだけです。つまり納税者は税金を取られるだけで消費できないので、消費は減ります。これが将来の納税者の負担です。
山本さんの支持者も、今は消費税がなくなると得しますが、将来は年金をもらえなくなります。山本さんも所得税の累進税率を強化し、法人税を累進課税(!)にするといっています。これは結局同じことですね。つまり彼は、今の消費税を将来の税金に置き換えているだけなのです。
「インフレ税」で年金給付は減る
永久に増税しない方法もあります。日銀がお札を印刷して国債を買うのです。お札を印刷できる国では、借金を返せないということはありません。消費税が18兆円足りなくなったら、1万円札を18億枚印刷すれば赤字は埋められます。
でも日本でいま流通しているお札は約100兆円ですから、18兆円もお札が出てくるとインフレになるんじゃないでしょうか?
大丈夫です。ハイパーインフレになりそうだったら、印刷をやめるのです。それで足りない財源は緊急に増税すればいいのです。でもインフレになってから増税するといって、すぐできるんでしょうか?
山本さんは「ハイパーインフレは先進国では起こらない」といっていますが、それは彼のような政治家が政権をとらなかったからです。頭のおかしい独裁者が政権をとった途上国では、ハイパーインフレはよく起こります。
れいわ新選組が政権をとって、山本首相が「借金は返さない」と宣言したら、国債が暴落して物価が上がり、ハイパーインフレになるでしょう。物価が2倍になったら、みなさんの銀行預金の値打ちは半分になり、国の借金も半分になります。
インフレは税金と同じなので、インフレ税と呼ばれることがあります。実質的な年金の価値は「年金給付額÷物価」で決まるので、給付額が同じでも物価が上がると実質的な給付は減ります。
これは政治的に手をつけられない年金給付を減らす最後の手段です。預金に課税するので格差は縮小しますが、医療や介護や生活保護などの社会保障も切り下げられます。
要するに老後までの人生を考えると、いま払う税金を減らしてもどこかで負担は発生するのです。山本さんの世代には、それがまだ見えていないだけです。それが彼が年金の話をしない理由でしょう。
どっちみち彼は年金をもらう年齢まで政治家を続ける気はないから、若い有権者に夢を見せて今年当選すればいいと思ってるんでしょう。それは選挙の戦術としては合理的です。そういう政治家が参議院東京選挙区で当選するのが、日本の民主主義なのです。