今治でタオル屋をしている池永将成と申します。
6月24日にNHKのノーナレという番組で外国人技能実習生を不適切な方法で労働させている企業が取り上げられました。
今回の件ですが、産地として大変重い課題だと受け止めています。希望をもって来日した実習生が、あのような法令を無視した過酷な条件下で労働している実状があることに胸が痛みます。国・行政としても、今治の産地としても同じ事例が発生しないよう、モニター/再発防止に努めていくべきだと考えています。その啓発として、この度の放送は大変意義のあるものだったと個人的に思います。
同時に、企業人・業界人としては頭を悩ませています。ツイッター等で起こっている今治タオルの不買運動についてです。
たすけてください!NHK放送後に「今治タオル不買運動」が始まった。取材拒否した今治タオルは… – NAVER まとめ
業界として真摯に受け止めるべき点もあると感じつつ、誤解も生じていると思います。
今治のタオル産業は、タオルの完成品を造り上げるまでのプロセスを様々な加工業者が担うことで、成り立っています。今回問題となった企業は、中間の一部工程の加工業者であり今治タオルのブランドライセンスそのものの権利をもつメーカーではないと聞いています。
懸案の業者が産地の中で操業をしていたことは紛れもない事実であり、重く受け止めるべき問題です。
一方で、実習生の労働環境含め法令を遵守し誠実な経営を志している企業もあるなかで、「今治タオル」という統一化された消費者意識の元、真っ当な企業まで不買運動による不利益を被る状況となってきています。弊社は、労働環境はもちろん実習生と日本人従業員で懇親会を行うなど、企業として当たり前のことを当たり前にやっています。
また、弊社だけでなく公正な経営を志している企業は産地に多数あります。放送翌日の6月25日には取引先や消費者の方から多数の電話のお問い合わせがありました。他社も同様だと思います。テレビ・メディアとSNSの負の相乗効果というものは計り知れず、このままでは「今治タオル」のブランドそのものの価値が不当に毀損され続ける致命的な状況に陥りかねない、実際に陥っていると危惧しています。
なぜこのような現象が起こるかということですが、製造メーカーが無数にあることや、タオル組合が保持する今治タオルのライセンスを許諾された複数のメーカーのみが使用していることをご存知ない消費者の方が多いことが理由として挙げられると思います。それらの方は「今治タオル」を全て同一のものと認識されています。
また、今治のメーカーのほとんどが放送のような劣悪な環境で実習生を労働させているような誤解も生じているものと思います。放送を直接確認したのでなく、2次情報、3次情報を元に「不買運動」を発信されているネットユーザーの方も少なくないと推察しています。
とにかく、私が声を大にして言いたいのは、正しいことを正しくやっている会社もある、ということです。
先述のように、今治の産業は様々な業者(そのほとんどは零細/中小企業)の協業で成り立っており、このままでは品行方正な取り組みをしてきた企業まで風評の煽りを受け、必ず倒産します。そして、産業構造的に連鎖的な倒産や操業停止が今治産地で発生します。
そうなると、大量の日本人の雇用が失われますし、報道とは異なり働きがいをもって日々従事している実習生の仕事も消滅してしまいます。産業としても立ち直るのに膨大な時間を要するでしょう。そのような事態は何としても避けたいと考えています。
では、どうするべきか。
こういったSNSでの草の根的な活動も重要だと考えていますが、ブランドが失地を取り戻すためには、再度メディアの力を持って別の切り口から両面的な報道・放送がなされるべきだと考えています。それしかないです。昨日から番組制作者の方に連絡を取らせていただいたり、NHKの問い合わせ窓口に連絡させていただいている状況ですが、あらゆるメディアのお力をお借りしたいと考えています。
弊社の技能実習生の状況を取材いただくでも、別の形でご相談させていただくことも可能です。正しい情報が再度テレビ・新聞・ネットを通して流通することが必要です。
どうかご協力いただきたいのですが、本記事を読んでいただいた方は是非シェア・拡散いただけると嬉しいです。メディアの方につきましては、昼夜かかわらず連絡をお待ちしておりますので、下記まで連絡いただけますと幸いです。
どうぞ、よろしくお願い致します。
(編集部より追記:26日午前)本記事の反響を受けて池永氏の続報コラムです。未読の方は合わせてお読みください。「今治タオル」の記事:拡散の御礼と今後の課題
池永 将成 株式会社ハートウエル代表取締役
大学で卒業後、シンガポールに渡り、現地企業でWEBコンサルティングに携わる。アクセンチュア株式会社を経て、独立し、株式会社MIDIOを創業し、新規事業開発などを支援。2018年9月より業務委託としてハートウエルの経営支援を開始。19年4月からハートウエルの代表取締役。同社HP。池永氏連絡先:m.ikenaga@hartwell.co.jp