昨年の入院中、結果として講演の仕事が入ってしまいました。
元々、軽い肺炎の疑いで、10日後の講演のために大事をとって入院したのが、数日後呼吸困難に陥り事態は一変します。死にかけた直後で、一時外出出来る状態ではありませんでした。しかし、講演をドタキャンすれば、お客様に多大な迷惑をおかけするのは明白でした。
そこで私は、現地に人を行かせて、パソコンに取り込んだ私の合成音声で講演し、質疑は講演先と病院をLINE電話で繋いで行いました。
先方も本人不在の講演の提案に、最初は戸惑いを隠せない様子でしたが、講演終了後は満足いただけたようで、翌日労いのメールを頂戴しました。
会社の都合(今回の場合、私の入院)で、お客様に迷惑をかけるわけにはいきません。気管切開の手術をすると決めた時点で、半年〜一年先に予定されていた講演を軒並みキャンセルさせていただきました。
人工呼吸器をつけた後の生活が不透明で、講演のクオリティも担保出来ない以上、そのままお受けすることは出来ませんでした。もちろん金銭面では大きな痛手です。しかし、中途半端な仕事で報酬を頂くわけにはいきません。
今月3日に、毎年お声掛け頂いている大学にて、人工呼吸器を付けてから初めての講演を行いました。冒頭の写真はその様子です。準備は困難を極め、1時間の講演に対して途方もない時間を費やしました。
しかしその途方も無い時間の中で、苦しさを感じる事は片時もありませんでした。寧ろ、どうやって今の私に出来る100パーセントを伝えるのかを考えるのに没頭していました。
ALSになる前の仕事に対するスタンスと全く変わってない事が、自分でもおかしかったです。やっぱり私は『仕事人』です(笑)
私の仕事へのプライドが凝縮された講演、必ず何か伝わったと信じます。
恩田 聖敬
この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ前社長)のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2019年7月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。