篠原孝・衆議院議員(国民民主党、長野1区)のブログ記事で、私に対する事実無根の誹謗中傷がなされている。とんでもない内容であり、許せない。
本日7月31日、代理人弁護士から内容証明付きで抗議書を送付した。7日以内の謝罪・訂正を求めている。適切な対応がなければ、直ちに法的措置に移行する。
ブログ記事(7月17日公表、ブロゴスにも転載)では、「国家戦略特区は安倍政権による新たな『利権』を生むだけ-『政僚』原英史の跋扈を許す制度は廃止すべし-」とのタイトルのもと、以下の記載がある。
かねてより(中略)八田達夫政策研究大学教授と原英史ワーキング・グループ(WG)委員の利権コンビによるいかがわしい政策作りが行われている。
今回その氷山の一角を毎日新聞(6月11日)が報じた。原と協力関係にあるコンサルティング会社が福岡市の規制緩和の提案を検討していた美容系学校法人から200万円のコンサル料を受け取ったという。また、同学校法人副理事長と原は、法人が負担し料理屋で会食も行っている。
WGで真珠養殖業の規制緩和の場合をみると、要望した真珠販売会社に原の方から自身の関係する上記のコンサルティング会社を紹介した。次に水産庁を呼びつけ、脅かし上げて規制改革とやらを迫る形で、特定の企業への利便を広げているのである。許し難いのは正義の味方のふりをし、悪辣なことばかりし、自分の懐を肥やしていることである。
コンサルタント料を稼ぐ昔の利権政治家まがいの利権学者、利権有識者の跋扈を許してしまっている。
第一の問題は、6月11日毎日新聞記事の内容が真実、と断定していることだ。これまで私の反論文で繰り返してきたとおり、この記事はそもそも虚偽だらけだ。
篠原議員は「新聞記事に書いてあったので、そう思った」というのかもしれないが、そんな言い訳は通らない。6月11日当日ならともかく、ブログの公開された7月17日時点では、私の反論も、毎日新聞社を提訴していることも、ちょっと調べればわかったはずだ。
しかも、篠原氏は国会議員だ。一般人とは水準の違う調査権限・機会を有する。その立場で、「毎日新聞記事は真実」と一方的に断定し、信ぴょう性を与えて拡散した責任は重大だ。
第二に、ブログでは、毎日新聞を越えた虚偽記載もある。とりわけ重大なのは、「自分の懐を肥やしている」との記載だ。毎日新聞社は、少なくともブログ記事公表の時点では、「原が金銭を受領した」との記事を書いたつもりはないと主張している(7月8日付毎日新聞社回答)。この部分に関しては、「新聞記事に書いてあったので」との言い訳もできない。
第三に、「いかがわしい」「悪辣」「利権有識者の跋扈」などと激しい言葉を用い、私を貶めている。一面識もない篠原議員に、なぜここまで誹謗中傷されなければならないのか、理解できない。政治の世界では、こういう言い回しで政敵を攻撃するのが当たり前なのかもしれないが、一般社会でふつうに暮らしてきてこんな酷い人格否定を受けたことがない。
篠原議員とは面識がないが、経歴をみると、農林水産分野での経験が長く、深い見識を有する政治家なのだと思う。それなら、こんな低次元な個人攻撃ではなく、もっと建設的な議論に力をつかってほしい。
意見が異なるとき、刺し殺すのでなく、議論してより良い結論を見出そうとするのが、近代民主主義の原点だと思う。誹謗中傷で相手にダメージを与えるような行動は、暗殺で異論を封じ込めた時代の延長としか私には思われない。
篠原議員は、漁業改革に関して、私と考えが異なる部分があるのかと思う。ブログをみると、漁業権は漁民や漁協に優先的に与え続けるべきであり、今回の法改正で「適切に運用していない場合には更新されない」仕組みになったことがおかしい、と主張されているようだ。私は、「適切に運用していない場合に更新される」ことのほうがおかしいと思う。また、官邸の会議は全廃し、政策立案は「善良な霞が関の官僚」に委ねるべきとの主張にも、私は異論がある。
しかし、考えの異なる部分があっても、長く政策の最前線で取り組まれてきた篠原議員の意見を、私は敬意をもって受け止める。篠原議員の過去のブログで90年代の漁業法改正経緯などの記事を読んだが、有益な内容だった。
篠原議員には、不当な誹謗中傷につき早急に謝罪・訂正いただき、そののちに、気持ちよく政策の議論ができることを願っている。
—
原 英史
1966年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理などを務める。著書に『岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか』(新潮新書)など。
編集部より:この記事は原英史氏がFacebookに投稿された毎日新聞に対する抗議文をベースに作成されました。原氏に賛同し、他にも掲載されているメディアもあります。記事が拡散され、アゴラでも関連の意見が投稿されるなど社会的な議論が広がりつつあります。