大村知事がテロに屈服したのも反省がないのも論外

八幡 和郎

愛知県の大村秀章知事は土曜日に臨時の記者会見で、慰安婦を表現したとみられる少女像などが展示されたことなどがきっかけで非難が集まっている「あいちトリエンナーレ」での「表現の不自由展・その後」につき、3日限りで中止すると発表した。

大村秀章・愛知県知事のツイッター、KBSニュースより:編集部

「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」としたFAXや、関係者個人への誹謗中傷が来ているとして「芸術祭を、安全安心で楽しんでいただきたいという思いで、一番いい方策は何かということで、今回こういう判断」をしたとしている。

名古屋市の河村たかし市長から展示中などを求める抗議文を受け取ったことについては、「内容についてのご意見なので、私がコメントをするとコミットすることになりますので、特にコメントはありません」と逃げた。

もしこれが脅しに屈したのなら、あまりにも安直なテロに対する屈服である。国際的に話題になるイベントだけに世界に大恥だ。オリンピックにも悪影響が出る。もしそうなら、私はテロの脅迫に負けた弱虫知事として大村氏を許せない。警備を増強すればすむ話だ。

しかし、実際には、大村知事は内容を把握していたのでないか。一部の関係者から、「知らなかったとは言わせませんぜ」と迫られて窮地に立ってテロの危険性を口実に逃げたのかもしれない。

どっちにしても愛知県という日本の主要自治体の知事として恥ずかしい限りではないか。昔からそれなりに評価してきた政治家だけに残念至極である。

さらに、これは井戸まさえ氏の指摘で気になったことがある。津田大介氏が「大過なく(会期の)75日間を終えることが目標だったのは変わらない。抗議が殺到する、脅迫がくるのもすべて想定していて、現実のリスクが大きいものが出てきたら中止せざるをえないと思っていた」と言っているとのことだが、これだと、「企画段階で、中止も想定されていたということなのか?」「それは出展者等には伝わっていたのだろうか?」というのはまことにもっともな指摘。津田氏の責任が問われる。


八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授