26歳未満の大半の労働者の所得税をなくすという法律が国会で可決されたんです。
日本の話ではなく、これポーランドの話です。
ポーランドの経済は絶好調、失業率は史上最低水準という今は好景気なんですが、8月1日から自営業者を除く26歳未満の就業者で、年間総所得が約240万円未満であれば個人所得税を免除されるんです。なぜ所得税を免除するのかというと、高い給与や就業機会など、より良い条件を求めて他国に移り住む若者が多いからだそうです。
ポーランドはEU加盟国ですから自由にEUの他国に行って働く、住むことができます。
考えてみれば日本も同じような現象がありますね。地方に仕事がないというだけでなく、より高い賃金を求めて田舎から首都圏あるいは関西圏などの一部の大都市に人口が集中している問題です。大学などの入学を機に都市部に行ってしまうケースもありますが、やはり一旦都市部に出てしまうと、なかなか元の郷里には戻ってこないですよね。
今、日本全国で人手不足と言われていますが、地方にとってはより深刻な問題であり、いっそのこと最低賃金を全国一律にすればいいのではないかという議論も時々出ます。
同じ賃金であれば暮らしやすい地方都市に、都市部から労働者が来る、あるいは自分の生まれ育った地域で職に就く可能性はあるかもしれませんが、しかしそれは労働者の視点であって、会社経営の観点から考えると会社が成り立たなくなります。
さて話をポーランドに戻しましょう。
可決された法律は、年収が日本円で約240万円未満、26歳未満の労働者が対象ということで、ポーランドの年間給与平均は約168万円。よって対象者が200万人にのぼります。
今まで、年間総所得が約240万円未満の人には所得税が18%かかっていましたが、今回の新法によって若者の労働者大半が、所得税免除になるそうです。最初に述べましたが、ポーランドの経済は好調ですが、人手不足によって成長の限界を迎えている。需要はあるのに人手不足で供給できない事態が様々な業界で発生している日本にも似ています。
そこで人手不足解消のためにポーランドは昨年、フィリピンと労働者受入れの協定を結んだそうです。これまでもポーランドは、隣国ウクライナ人に短期就労ビザを発給し、100万人規模を受け入れていました。加えてフィリピンから、今後数年で30万人を受け入れるとそうです。思い起こせば昨年、日本も国会で外国人労働者の受け入れを議論し、今後の受け入れ人数は5年間で最大34万人でした。
今までも、日本には外国人研修生などがいましたけれども、日本の総人口1億2600万人に対してこれから34万人の受け入れですよね。一方、ポーランドは人口が3840万人に対して130万人ですから比率は圧倒的にポーランドの方が多いです。
トランプ大統領が批判的に言っている、メキシコ人が国境を越えてアメリカに働きに来る、ポーランドの場合は、国境を越えてEU域内全土に働きに行く。
日本と何が違うのかと言えば、隣国と陸で繋がっていない島国ということですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。