香港で「人間の鎖」が行われ、13万5000人、約60キロの長い輪が出来たと報じられています。この香港での「イベント」は1989年、バルト三国が当時のソ連からの独立を訴えて行ったことから30年たったことを祝したものでその時の鎖は200万人600キロだったとされます。
なぜ、中国は香港を強力にコントロールしようとしているでしょうか?一国二制度は名ばかりのものとなりつつあるのでしょうか?たぶんそうでしょう。私がよく指摘する中華思想は当然、香港にも及びます。中国本体が全ての中心であり、そこにがっちり組み込まれるのが冊封という考え方です。それに対して香港市民は体を張っての抵抗を続けます。どこに落としどころがあるのでしょうか?中国本土は一歩も引くことはなさそうです。なぜならそれは中華思想の敗退を意味するわけで共産党のメンツどころの話ではないのです。私は厳しいバトルが続き、香港市民が諦めるまでやり続ける気がします。
週末開催されたG7。開催前からその成果が危ぶまれていましたが、結局当初の見込み通り首脳宣言はなく、たった1ページの成果文書が出ただけです。トランプ大統領は「なぜG7に参加しなくてはいけないのか」と述べたとも報じられています。
なぜG7が機能しなくなったのでしょうか?トランプ大統領のパワーもそうですが、私は欧州のバラバラになりつつある連携に根本理由が存在するのではないかとみています。つまり、10年前の一体化する欧州でPIIGS問題を切り抜けたあの苦労を分かち合う体制が無くなったことです。ゼロなのです。
理由の一つに本来では厳しくなりつつあるのにどこの国も経済的危機感が欠如しているのです。欧州危機が叫ばれた時、一部の国の国債は売られ、ギリシャは厳格な規律を課したドイツを中心とするEUから厳しい条件を突き付けられました。ただ、あの時のEUの結束力は問題解決に向けた一致性が見られました。
今、スペインの10年物国債はざっくり利回りが0.143%、ポルトガル0.175%、イタリア1.221%、ギリシャ1.949%のレンジです。一方のアメリカは1.535%なんです。イタリアがアメリカより低り利回り?そんなバカなことは信じられませんが、これが現実なんです。
10年前の危機を乗り越えたところで国家元首も国民も10年間の回復の歴史の中で各々色を出してきました。それは概ね10年前の否定であります。あの時のあの問題を反省した上で我々は違う国を目指す、というボイスが出てきます。これは「EUにおける地域主義の勃興」と言ってもよいでしょう。
このバラバラ感がG7における力の均衡を壊してしまったと見たらどうでしょうか?私はトランプ大統領がなぜ、これほどの強権を持てるようになったかといえば逆に他国のベクトルが一致せず、唯我独尊に陥り、好き勝手なことをし始めたからだと考えています。トランプ現象は起こるべくして起きたとみています。
もう一つは世界をコントロールする仕組み、ガバナンスが異様に複雑、かつオープンな状態になり、かつてのような国家運営とは全く違い、他国との連携、協調、更には情報の交錯など複雑化してしまいました。その先鞭が国境なきマネーであり、世界は金融緩和という劇薬に翻弄され、マネーに引っ張られる形で世の中のぎくしゃく感がどんどん大きくなってきた、とも言えないでしょうか?
とすれば「協調しない世界」が生まれた背景はリーマンショックからの約10年に起きた世界の無理な連携、そして金融緩和という雪崩のようなマネーで押し流された国境が生み出した国民と国家のエゴなのかもしれません。
北朝鮮は「俺も仲間に入れろ」とロケットを飛ばし気を引こうとします。韓国は右往左往して腰が宙に浮いてしまっています。習近平氏は自身の体制を盤石にした瞬間に難題続きで苦悩の日々を送っています。プーチン大統領は明らかに賞味期限が過ぎて国内を抑えるが精いっぱいになっています。新興国は大国の日々の動きに振り回されています。
この世界が今後、どうなるのか、予想しがたいものがあります。ただ、安倍首相がG7で「多角的な自由貿易体制が課題に直面している」と評した点において本質を理解し、世界をまとめられる唯一のG7メンバーだと感じてます。トランプ大統領とうまくやっていけるのも安倍首相です。すり寄るのではありません、猛獣使いです。首相には引き続き世界を引っ張ってもらいたいと思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月27日の記事より転載させていただきました。