今の若者は年金が貰えるのだろうか?

岡本 裕明

厚労省が将来の年金の給付について5年に一度見直す「財政検証」が発表されました。この検証で多分、一番気を引くのは「今の若者はもっと長く働かないと年金を手にすることが出来ない」という点でしょう。

(写真AC:編集部)

現在の20代は68歳9カ月、30代は68歳4カ月、40代は67歳2か月まで保険料を納付をすると現行の65歳給付と同じ水準の年金がもらえると計算されています。現行が60歳まで納付して65歳で貰うと基本支給額となると考えれば5年間の待ち期間があります。これを単純に適用すると現在の20代の人は73歳9か月でようやく年金を貰えるということになります。

さて、これをどう評価するかです。若手現役世代からは一部から「どうせ、こんなの払ったってもらえないぜ」という声があったのは事実です。もちろん、制度にも問題はありますが、我々がより長生きするようになったという点を見過ごしてはいけません。

日本の平均寿命は世界でもトップクラスで、女性は87.26歳、男性が81.09歳となっています。これは1960年の女性70.19歳、男性65.32歳から女性は17年、男性も16年延びています。年金の制度はこれほどの平均寿命の延びを想定しませんでしたから支給年齢が先送りされるのはやむを得ません。

言い換えれば年金暮らしを何年するかという逆算をした方がよいぐらいです。個人的感覚としては年金にお世話になれる現行の年金設計は10年程度ではないかと想像しています。今の平均寿命は今後、更に伸びていくものとみられ、今から30年で女性の平均寿命は90歳を超え、男性も84歳に近くなると見られています。

ただ、実際には、私見ですが、そんなもんじゃないと思います。今から30年後はそれより5歳ぐらい延びるとみています。理由は医学の進歩と国民の健康への留意がより強まるからです。

今の医療の進歩具合からすれば癌は普通に治る病気になるのでしょうし、それ以外の難病も徐々に治療方法が見つかっていくものと思われます。それを考えれば今の財政検証は甘い見積もりの可能性がありますが、これはガンは克服できるといった未実現のファクターを検証に盛り込まないという前提に立てば「財務検証」には問題なく、むしろ、読み手がそこを割り引かねばならないとも言えます。

それを考えれば今の年金システムが本当にずっとワークするのか、疑問はあります。

私は20~30年かけて現在の年金制度を少しずつ変えていく方法を取るべきと考えます。例えばいわゆる賦課方式とされる「現役の保険料納付金は今の高齢者のもの」という仕組みを変えていくべきです。つまり、賦課率100%を年に数%ずつでも下げて自分の保険料は自分のものにする仕組みに変えていくべきです。今の年金制度が「あなたのものは私のもの、私のものも私のもの」という冗談のような話になっていることでは誰も納得しません。

一方で女性の社会進出に伴う保険料収入の増大は期待できるでしょう。また変な話ですが、外国人労働者が払う保険料も「取り得」になっています。これは外国人労働者は日本人と同様等しく厚生年金の保険料を払わねばなりませんが、10年納付しないと支給資格が取れません。多くはそれ以前に帰国します。では外国人労働者は払い損かといえば制度上は年金脱退一時金を請求することが出来ますが、結構面倒な手続きで年間数百件程度の裁定しか行われておらず、仮にそれで勝ち取っても返済率は半額以下です。つまり今のように外国人労働者が増えると財政的にはプラス要因になります。

もう一点は家計のバランスです。一般的な家庭の場合、子供が成人するのは親が50代です。そこから先、教育費、養育費がかからないとすれば夫婦の家計は大きく改善するでしょう。また、住宅ローンがある人もそろそろ終わる頃です。もちろん、収入も大きく減ってくるのですが、それでも働いている限り蓄えにはなるはずでそれが年金を貰えるまでの間の貯蓄として活用されることも想定されます。

今回の「財政検証」は極めて理数的にとらえている可能性がありますが、2-30年後の生活が大きく変わるファクターをより多く取り込まないと何が何だか分からなくなり、また数字だけが独り歩きするかもしれません。個人的には今の若者が路頭に迷うようなことはまずないと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月28日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。