8月末に6日間、自民党から中国とネパールに海外視察に行かせていただき、女性活躍推進の実状をつぶさに観てまいりました。
自民党女性議員有志による「女性議員飛躍の会」から、稲田朋美先生を団長とする総勢6名の“軍団”が元気よく北京、杭州、広州、カトマンズを廻り、タイトなスケジュールでしたが、「百聞は一見に如かず」! やっぱり、日本のジェンダー・ギャップ指数が世界で110位、先進国中最低というのもうなずける、と実感したところです。
中国では、外交部や中連部(中国共産党中央対外連絡部)、地方政府の要人、日本企業の中国進出を支援する弁護士事務所、広州トヨタなどを訪問し、米中貿易問題などを含め、幅広く意見交換を行いました。
中国共産党の幹部は、中央政治局常務委員7名をはじめとする幹部(政治局委員18名含む 計25名)の中で女性はただ一人(孫春蘭・国務院副総理)。これは、私が経産省に入省したての1980年頃と変わっていませんが、地方議会の幹部には、例えば、広州市の李玉妹・広東省人民代表大会常務委員会主任(議長)や、杭州市の梁黎明・浙江省人民代表大会常務委員会副主任(副市長)のように徐々に女性の幹部が登場してきています。
ただ、法曹界は司法試験の合格者が半分以上を占めるなど、高度な専門分野で女性進出が進んでいるのに比べると、政治がまだまだ男性の世界であることは、日本と変わりません。
圧巻は、なんといっても、オンライン・マーケット界の最大手、アリババのジャック・マーCEOにお会い出来たこと、そして、彼の理念に共鳴できたことです。
近々、CEOを退任し、社会貢献のために第二の人生を送ることを公言しておられますが、その理念とは、①ベンチャーの育成、②教育の充実、そして ③女性活躍推進、の3つ!
多様化こそが企業を成長させる原動力になるというわけです。①と②は誰でも言うことでしょうが、③は、少なくとも日本では彼の理念としてあまり認識されていません。
アリババは全世界に12万人の従業員がいますが、そのうち女性の占める割合は49%(ジャック・マー会長の講演では、最近アリババが他社の買収を行った結果、34%に下がったそうですが)! 役員にも、CFO(最高財務責任者)、CHO(最高人事責任者)、B2B事業部総裁、アリママ総裁(インターネット広告取引プラットホーム)などの枢要なレベルに女性が登用されています。
何を買うかという消費の決定は、恐らく女性が行う比率が圧倒的に高いでしょうから、女性の活用は当然といえば当然ですし、日本でも、特に消費財を扱う企業では、女性を活用している企業の業績が高いことがわかっています。それでも上場企業の女性役員の割合は 4.1%と、米国(17.9%・2015年)等と比べて相当低いのは事実です。
ジャック・マー氏は、アリババの成長のために女性活用は不可欠と考え、それを実践してきたわけですが、彼の器量がそれを可能にしたと言ってよいと実感しました。
女性の感性、女性と生活との密着性、「何が売れるか」、「これからの少子高齢社会に何が必要か」を導きだす大切な力となる、ひいては企業の成長に結びつくということですが、それを実現するにはトップのリーダーシップが不可欠です。
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ネパールは、1990年の民主化運動を経て王制が廃止され、約10年間、内戦状態に陥りましたが、2015年には、新憲法が公布され、連邦民主共和制に移行しました。新憲法では、例えば、国会議員の3分の1は女性とすることが規定されるなど、政治分野でのクォータ制が進められ、我々も女性政治家のトップとしてバンダリ大統領、タパ女性・子供・高齢者大臣などと意見交換ができました。
国会議員の3分の1を女性が確保するため、女性を比例区で優先採用するなど、まだまだ試行錯誤は続いていますが、民族の多様性とともに、男女の区別なくその能力を国の発展に活かすために努力されている姿は感銘を受けました。
いずれにしても、女性の能力をフルに活かすことが、人口減少時代、少子高齢化社会のブレークスルーになると確信する私にとって、今回、その一端を近しい国々から学んだことは、大きな成果だったと思います。
太田 房江(おおた ふさえ)参議院議員(自由民主党、大阪府選挙区)
1975年通産省(現・経済産業省)入省。2000年大阪府知事選で初当選し、日本初の女性知事に。2008年に知事退任後、民間企業勤務を経て、2013年参院選で初当選(現在2期目)。厚生労働政務官などを歴任。公式サイト、ツイッター「@fusaeoota」、LINE@