青少年安心安全ネット利用タスクフォース@総務省。
主査を務めます。
第7回、新対策のとりまとめ会合です。
10件の報告を受け議論しました。
すんなりまとまらず、主査一任をとりつけて調整・公表することになりました。
前回までの議論はコチラを参照。
「青少年ネット安全安心対策はいま」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2019/04/blog-post_18.html
内閣府の調査によると、青少年のネット利用は93%、ほぼ全員。
スマホ利用は63%。
9歳以下の低年齢層ではネット利用57%、スマホ33%。
高校生のスマホは99%が自分専用。小学生は専用36%で、親と共同が57%。
11~12歳にかけて25ポイント上昇し、専用と共用が逆転する。
低年齢層の保護者は98%が子どものネット利用を管理しています。
大人の目が届く範囲で使わせているのが93%。
使う時間や場所を指定しているのが58%。
一方、フィルタリングはわずか9%。
安心安全対策は進んでいます。
各通信会社のフィルタリングの名称(あんしんフィルター)がロゴを統一。
SNSが使える「高校生プラス」を提供。
カスタマイズ設定を簡単にする。
iOSやAndroidのOS機能を活用できるようにする。
対策が積み重なってきています。
フィルタリングを開発・提供するデジタルアーツ社は、フィルタリングの制限を緩和し、子どものスマホ利用状況を保護者が確認できる仕組みを導入しています。
学校などに講師を派遣するマルチメディア振興センターFMMCの「eネットキャラバン」は、5169名の講師が認定され、全国2万件、受講者数は34万人にのぼる実績を上げています。
フィルタリングは海賊版対策にも有効なので、普及の公的ニーズは高まっています。
そして関係者の涙ぐましい努力も続きます。
にもかかわらず、フィルタリングの普及は4割を切り、低下傾向にあります。
これが課題。
対策として、
・携帯電話事業者によるフィルタリング利用の実データの公表、販売代理店への指導
・OS事業者(Apple、Google)、MVNO、SNSプロバイダの取組推進
・周知啓発の推進、使いやすいサービスの普及、情報発信
などが挙げられ、全関係者の行動を後押ししています。
これに対する異存はありませんでした。
ここで安心ネットづくり促進協議会(安心協)から重大なデータが提示されました。
子どもがスマホを使う上で保護者が気にすることは「スマホ依存」が8割強なのに対し、フィルタリングの主目的である違法有害情報アクセスは3割強にとどまる、というのです。
スマホ利用リスクの保護者の認識はスマホ依存、学習・成績への影響、身体や健康への影響が突出した3トップ。「長時間利用」を問題としているわけです。
フィルタリングの普及が進まないのは、提供側の思いと、利用者の懸念とがズレているせいではないか。
フィルタリングは利用時間を制限・管理できる機能があるので、フィルタリングを促進することは利用者(親)のニーズに合致します。
だが不適切情報を遮断するフィルタリングがアプリやSNSを使えなくする=不便にする厄介者になっているために、提供・利用の双方が二の足を踏んでいるのではないか。
安心協は、フィルタリングが多様な役割を担うので、有害情報を遮断するフィルタリングという名称に変わる用語を考えるべき、と提案します。
「超フィルタリング」ですね!
健康のためにフィルタリング、頭がよくなるフィルタリング。
ポジティブ路線に切り替える必要があるのかもしれません。
青少年ネット安心対策は、ガラケー→スマホ移行から10年を経て、改めて「転換点を迎えた」(森弁護士)。
フィルタリング対策を推し進めつつ、転換点の新展開を考えたい。
引き続きよろしくお願いします。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。