私は時々自分で「やっぱ私って依存症者よね~」と病気を自覚することがあります。
依存症って回復プログラムに取り組んでいくと良く分かるのですが、感情と密接に関わっているんですよね。
で、「感情」というのもみんなハートを思い浮かべて、胸に手をあてたりしますけど、実際には「脳」で感じているんですよね。
聞いた話によると、大脳辺縁系の扁桃体が深く影響しているらしいですよね。
それで、感情が暴走しないように、理性で抑えてる訳ですが、この理性をつかさどる部分が前頭前野らしいですけど、依存症になるとこの前頭前野の働きが悪くなると言われますよね。
私なんか依存症真っ最中の頃は、不安と過去のストレスと現在のストレスが、絶え間なく襲ってきて、頭の中の火山が爆発したようになって、とにかく嫌なことしか思い出さず、恨みや恐れしか考えられない状態になっていました。
これ今思い出しても辛いですよ~。
とにかく明るく前向きになれる時間が全くないんですから。
それで、仕方がないから、自分の気持ちを引き上げ日常生活に対応できるように、依存症を使っていたんですよね。それやってる時、もしくはそのことを考えている間は、ほんの少しだけ生きる希望がわき、気持ちがひきあがるからですね。
では、今現在依存症から回復して、こういう脳の機能不全が治ったのか?と言ったらですね、基本的には治っていないような気がするんですよね。
すごくストレスフルな環境、ハードすぎる毎日、プレッシャーがかかることが続いてくると、ものすごくネガティブな感情に支配されるようになります。いわゆる「頭ん中がぐるぐるになる」という状態ですね。
私なんか、殆ど毎日睡眠障害状態なので、最近は2日に1回しか寝ない…みたいになってきて「大丈夫かしら?」と毎日思っています。
依存症者は本当に簡単にこの「ぐるぐる状態」に陥ってしまい、とにかく大げさに物事を考えるようになります。いわゆる「最悪化」という奴ですね。
だから依存症者は親密な関係を築いていくことが苦手です。
私の場合を例にあげると、調子が悪くなるとこんな風になるんですね。
1)自己肯定感や自尊心が下がっていく
「どうせ私なんか…」「私ってちっぽけよね」「自分は大事にされる人間じゃない」「私なんてたいした価値がない」といった感情に支配されていきます。
2)相手はきっとこう思っているに違いない
自己肯定感が下がっていると、相手のささいな言葉尻や、何気ない発言にひっかかってしまって、必要以上にバッサリと、心がケサ切りされたように深く傷ついてしまいます。
3)相手の真意を確認できない
自分で自分の価値を下げているので、相手の気持ちを勝手に最悪に予測してしまい、「あれ、どういう意味だったの?」とか、「私は、こんな風に思っちゃったんだけど?」と気軽に確認できなくなる。
4)恨み、恐れ、不安、怒り、悲しみに支配されていく
悪い想像がどんどん膨らみ、見捨てられたり、嫌われる妄想に支配され、ますます本心を言えなくなる。
5)こんなに苦しいなら自分から離れようと思う
自分の中で悪い想像が膨れ上がり、突然爆発させてしまう。相手とも冷静に話しあえず、売り言葉に買い言葉で傷つけ合い関係が壊れる。
6)反省期
孤独に見舞われ、自助グループなどで基本に立ち返り、「あれは発病していたんだ!」と気がつき「次こそうまくやろう!」と決心する。
そして、振り出しに戻る…
ってな感じですね。
さすがに15年依存症者として生きてくると、もうこの辺の自分のサイクルがわかってきて、「お~!最近やべ~し。ミーティング行こう!」とか「仲間に話そう」とか、4)あたりになってきた時に「いや、勇気を持って相手に率直に聞こう!」なんていうスキルが身についてきましたけど、油断はならないと常に肝に銘じてます。
よく取材なんかを受けると「えっ?いまだに自助グループ行ってるんですか?」なんて聞かれますけど、「はい、これマジで一生やんないと、やべ~奴なんです」と答えてます。
義務でも仕方なく行ってる訳でもなく、その方が楽だから繋がり続けている訳です。
つくづく依存症は慢性疾患だなぁ~と思いますけど、そのお陰で、温かい共同体と受け入れてくれる仲間に恵まれ続けるという利点もあります。
ご参考までに。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト