大村知事が憤懣やるかたないのは分からないでもないが、だからと言って、裁判だ、国を訴えてやる、などと騒ぎ立てるのは止められた方がいいかも知れない。
一旦採択された補助事業について補助金の給付申請をしたところ、手続き不備を理由に補助金の不支給決定がなされた、という事案のようだが、仮に補助金不支給決定に何らかの手続き違背や理由不備があったからと言って、不支給決定を取り消して直ちに補助金の支給決定がなされる、という関係にはないようだから、不服審査手続きを活用されるのはいいが、いきなり訴訟というのは短絡的に過ぎるように思う。
政治家としての大村知事は、国に対しても名古屋市に対しても一歩も引けないような難しい立場に追い込まれてしまったのだろうが、あまり熱くならない方がよさそうだ。
愛知県に補助金受給権が発生していることが確定しているのならともかく、どうやらまだそこまでの段階にまでは至っていなかったようだ。
一旦は補助事業として採択された、という事実はあるようだから、愛知県に一定の期待権が発生したと見る余地もないではないが、その期待権にどこまでの法的保護を与えるべきか、という議論になると法律実務家の間でも見解が相当分かれそうである。
先例、判例がある分野ではなさそうなので、ここは慎重に対処された方がよさそうである。
大村知事は自民党の元衆議院議員で、官邸とのパイプもそれなりにあるはずだから、ここはあえて杓子定規な法的手続きによらないで、政治的に解決するのがいいんじゃないかな、というのが私の率直な感想である。
ご参考までに。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年9月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。