日経によると香港市民のうち「42%が移住を考えている」とし、6~8月に香港からシンガポールに移動した資金が4300億円相当も動いたと報じられています。
香港の想定以上に長引く民主派の抵抗に習近平氏も手を焼いていることでしょう。一国二制度がどうやっても機能しないのであれば筋論からすれば香港は独立国家になるべきなのですが、事はそう簡単には展開しません。
同様の問題を抱える台湾。一応、中国本土からの直接的関与からは距離がありますが、台湾と国交関係を結ぶ国は蔡英文氏が政権を握ってから7つ減って現在15カ国。その大半は小国でありますが、中国の包囲網がじわっと効いてきているのも事実です。
台湾はかつて危うく中国本土から「接収」される危機があったのですが、それを逃れたことがあります。それは朝鮮戦争の時でその頃中国は台湾を抑え込む準備をしていたのですが、中国が朝鮮戦争に参加することになり、兵力を確保できず、諦めたのであります。
一方、朝鮮半島に目を向ければこれは動乱の歴史と言ってもよいと思います。半島内の抗争のみならず、歴史的には半島に対して北の勢力(モンゴル系)と中華勢力(漢民族系)が常にあり、更に日本が時々それに加わるというのが大方の歴史でありました。半島自体が、近代になっても自立というよりどこかの国に大きな影響を受け続ける形がずっと続いています。
北朝鮮は本来であれば金日成との関係から旧ソ連派でありました。同じ共産党でも中国共産党(延安派)ではなくスターリンのソ連であります。が、スターリンが死去し朝鮮戦争が休戦し、ソ連が崩壊する歴史の中で、より自主性を強めるとともに「失うものがない」強みが逆にあらゆる脅しに大国ができない対抗手段を示すのが特徴でしょう。
例えばアメリカが北朝鮮に負けた事案としてプエブロ号事件というのがあります。1968年にアメリカの情報収集艦プエブロ号が遊弋(ゆうよく)中に領海侵犯という理由で北朝鮮は攻撃、収集艦は拿捕されます。アメリカは空母「エンタープライズ」を近海に派遣し威圧を行いますが、北朝鮮は引かず、結局、アメリカは謝罪、プエブロ号は今でも北朝鮮で反米のプロパガンダとして一般公開されています。これはアメリカが大国過ぎたが故、という見方もできるのです。
このメンタリティは今でも続き、金正恩委員長がミサイルなどを飛ばすのはテロリストが「ディールしたいならこっち向け」と言っているのと同じでそれに乗るトランプ大統領には期待感はあれど成果が出るとは思えないのであります。
ただ、歴史を辿るといつまでもその微妙なバランスは維持できるものではなく、均衡が破れる時は来るものです。それがすぐに来るのか、何十年後なのかはわかりません。一つ言えることは朝鮮半島は不安定であるということです。
その不安定感を作り出したのは私から見ると中国がその長い歴史の中で闘争が多く、なかなか自立できなかった弱さにも原因があるとみています。香港、台湾に限らず中国の西部の民族問題をみると結局大国と称しながらも中国は歴史と裏腹に若い国であり、力による制圧が主であり、地域の安定を伴う質的向上には程遠いのだろうと感じます。
その点、日本は歴史的にもスタンスが明白で世界が地球規模に変質化する入り口となる幕末明治維新の時、日本がなすべきこと、アジアがどうあるべきかを主導できる唯一のアジアの国であったのは特筆すべき点であります。日本が基本的には占領されたことがなく、なすべきことを武断主義の中に文治主義をもって治めたことは否定できないのかと思っています。武断、文治とは江戸時代の統治主義の比較論でありますが、それは日本の近代の歴史に大きく影響を残したと言えるのではないでしょうか?
大陸を中心とした東アジアの混沌はまだまだ続くのでしょう。その中で日本の役目とは中国、アメリカ、ロシアという覇権第一義のような国とは一線を画した地域の安定と平和にどう貢献できるのか、ここにかかってくるのだろうと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年10月14日の記事より転載させていただきました。