台風によるフライト大混乱と火事場泥棒的飛行機料金

台風19号で被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

台風による自然災害であったので、仕方がない側面はあるが、今回の台風による空港会社の対応はひどいものだった。特に、火事場泥棒的な料金設定には、「困った時に人助け精神」の欠片もない。前回の最後に13日発14日着の便が確保できたと書いたが、この便には結局乗らなかった。これには腹立たしい経緯がある。

Xoan Baltar/flickr

ANAに連絡も取れなく、やっと連絡が取れた際に提示されたのが、シカゴ経由の15日夜の帰国便だったので、一刻でも早く帰国便を確保したいと思って、確保したのがJALのエアロメヒコが運航するコードシェア便だった。ネットで予約した時には「ビジネススタンダード」と表示されており、分類でも「ファースト・ビジネス」の項目で表示された。約60万円だったのでビジネスと信じていたが、なんと送られてきた予約表のシートにはクラスYと書かれている。

私の部下たちは十数万円で同じ便のクラスY(私と同じ)を購入できていた。この火事場泥棒的な商売はあまりにもひどい。後にメキシコ側から確認すると、このシートクラスはプレミアムエコノミーに分類されている。このJALのやり方は詐欺に等しい。というか立派な詐欺だ。窓口はビジネスで、購入するとエコノミーの席を指定し、そして、後述するが、キャンセルもできない。どさくさまぎれにここまでするかと思う。ちなみにメキシコの航空会社のビジネス航空運賃は普段の2倍近くになっていた。

あとでほぼ同額でANAのビジネスが確保できたので、このJALフライトをキャンセスしようとしても、ネットではできない。フライトを運行するメキシコの航空会社のカウンターに行くとJALで買ったのだからJALに電話しろという。2日間、メキシコからも、日本の知人からも、絶え間なくJALに電話をかけ続けたがつながらなかった。延べで30時間以上は電話をかけていたし(待っていてもJAL側から接続が切れ、電話をかけなおす繰り返しだった)、メキシコ空港のメキシコ航空会社カウンターにも何回も足を運んだ。

同じ状況の皆さんが同じような経験をされたと思うが、帰国便が取れない、電話もつながらないというストレス状況が2日間続いて、胃が痛い。帰国直前に再度メキシコの航空会社に行って何とかして欲しいとお願いしたところ、さすがに同情してくれたのか、メキシコの航空会社の担当電話窓口を教えてくれた。ここにはすぐにつながり、キャンセルができた。

ANAも混乱が続いていた。ようやく電話がつながり、ヒューストン経由の便が確保できて一安心したのもつかの間、2時間後にヒューストンからの成田便がキャンセルになったとショートメールが届く。キャンセルの連絡は簡単に送って来るが、代替え便はこちらから電話しないと全く分からない。電話がつながらない今回の状況では、乗客はお手上げだ。

そして、堪りかねて、金曜日の夜、メキシコ空港のANAカウンターに直接出向いた。すると14日深夜発のビジネスクラスがあるという。エコノミーなら13日と言うが、時差とストレスからかなり体調が悪かったので、血栓のリスクも考え、14日発にすることにした。すると、すぐに14日は成田から来る便が来ないのでキャンセルと連絡がきた。

よく考えれば、当たり前だ。私もボーとして思いつかなかったが、「当たり前田のクラッカーだ」。この混乱は何なのだと一気に血圧があがった。再度、空港カウンターに行くと13日発の席が確保できたと言う。「最初からそうしろよ」と心の中で激怒するが、ニコニコと微笑みながら「グラシアス」と返事するしかない。おまけに、私が乗ったフライトのビジネスクラスには空席があった。?????だ。

2日間延泊したが、この間、全く仕事をする心の余裕も暇もない。航空会社に電話をかけ続けてもつながらないストレスと、つながっても次々に再度キャンセルされるフライト、火事場泥棒的で詐欺的なJALの料金設定、現地の運航会社でキャンセルできず、JALには永遠につながらない状況、日本全体が影響を受けた状況であることを最大限考慮しても、まともなビジネスの精神からは程遠い惨状だった。

担当者が出るまで待ち続けないといけないのはあまりにも不合理だ。メッセージを受け取って、順次折り返しの電話する形にできないものかと思う。フライトの変更もAIなどを利用して、早急に対応できないのだろうか。

これからも、気候変動で大きな台風が来るだろう。それに備えた危機管理体制と困っている人に思いやりのある料金設定をお願いしたい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。