「とにかく研究が好き!今まで世の中になかった世界初を自分の手で、自分の目で見たい。」という井上さん。
自分が好きな研究を思いっきりできる環境を創るために、修士課程の時に、理工系の大学院生・大学生のみで、リバネスを立ち上げた。
まず始めたのが、子ども向けの出前実験教室をはじめとする「教育応援プロジェクト」だ。「俺の研究が一番面白い。」ということを子ども達に伝えたかったのは勿論、未来に自分たちと一緒に研究してくれるの仲間づくりのためだ。
ブロッコリー、フードプロセッサー、アルコールと水を用いて実際にDNAを見るなど、その伝え方は斬新かつ分かりやすい。これまでに多くの学校でリバネスの出前授業を導入し、延べ15万人の子供たちに科学の面白さを伝えてきた。卒業生たちがリバネスの門をたたくことも珍しくないという。
実験教室を経験して気付いたことは、子供たちに伝えることで一番成長しているのは、実は、伝える側の自分達だということだった。
そこで、次に展開したのが「人材応援プロジェクト」。
企業と連携し、企業の研究者が、自分たちの研究を子供たちに伝える場をつくることで、研究者の成長とやりがいにつなげる。
次に、「研究応援プロジェクト」。
初めは、様々な専門を持つ大学院生が自分の研究がいかに面白いかを語る、カフェでの交流会から始まった。その後、学会として2012年に超異分野学会を設立。分野を超えたあらゆるテーマを集め、熱を持った研究者、ものづくりに長けた町工場、資本力とノウハウがある大企業をうまくつなげていく。つなぐことで生まれる価値、それによって社会がどう変化するのか、方法論や技術が勃興している今、未来につながる議論を行う。
さまざまな段階での研究者への研究費、投資、出資などの支援も充実している。
更には、「創業応援プロジェクト」。ベンチャー起業家たちが口をそろえて言うことがある。
「先輩ベンチャーにしか、応援してもらえなかった。」
大学で生まれた研究成果、科学技術の社会実装を目指す研究者やベンチャー企業のためのプラットフォームとして2014年からテックプランターを開始、日本全国、海外の複数で開催している。
ここでは、リバネスが各地域において先輩ベンチャーとの関わりを最も重視する。
これまでのベンチャー支援システムは、注目された特定ベンチャーに対し、国や自治体が支援し、それ以後続かないことが少なくなかったが、リバネスのテックプランターでは、新たなベンチャーが生まれ続ける土壌づくりを支援する。
リバネスのコミュニケーターが、ベンチャー企業とも日頃から密にコミュニケーションを取り、次回のテックプランターでは、先輩ベンチャーが後輩ベンチャーに対しアドバイスや投資をする制度と風土をつくる。
実際に、熊本のテックプランターでは、排塩で塩分をマネジメントする「デルソル(しおナイン)」(トイメディカル社)などが生まれ、今では、同社が、熊本のテックプランターのパートナー側に回っているという。
「たった一人の熱が世界を変えるかもしれない」、すなわち、「物事を好奇的に捉え、情熱を持って諦めずに実行する力」が大切だと力を込める井上さん。不惑になっても、子供のような情熱と笑顔が印象的だった。
<もう少し知りたい!>
・【書評】ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」
・(書評)世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる(丸幸弘)
<井上貴至 プロフィール>
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2019年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。