霞ヶ関を「ブラック職場」にするゴロツキ野党議員

池田 信夫

森ゆうこ議員が情報漏洩がなんちゃらとわけのわからないことを言っているが、この問題の本質は、彼女が台風前夜に多くの官僚を深夜まで待機させ、しかもそれを批判されると「規定の提出期限までに出した」と嘘をついたことだ。まず経緯を簡単におさらいしておこう。

参議院インターネット中継より:編集部

  • 大型の台風19号が首都圏に接近していた11日夜、何人かの官僚がツイッターで「森ゆうこ議員の質問がまだ来ないので家に帰れない」とつぶやいた。
  • 最初に森議員が出した14項目の箇条書きでは、どの部署が答弁を書くのかわからないので、20:30ごろまでは全省庁待機がかかり、数百人が待機したものと思われる。
  • 次第にその内容が追加されて具体的にわかったので、無関係な省庁から待機が解除されて帰宅したが、担当官庁は徹夜になって帰宅できなくなった。
  • 質問は何度も追加され、最後の更新が終わったのは24:25だった

森議員は「質問通告は提出期限の17時より前の16:08に出した」と主張したが、これは嘘である。その後も質問通告が更新された記録が残っているからだ。彼女はこれを「追加ペーパー」と称しているが、何と呼ぶかは問題ではない。その質問への答弁を書くために官僚を深夜まで待機させたことが問題なのだ。

もう一つの問題は、原英史氏が毎日新聞社と係争中の事件について、森議員が質問で「公務員だったら収賄にあたる」といったことだ。これについては原氏が14日にアゴラに「事実に反する」という記事を投稿したが、森議員はそれを無視してこう質問した(1時間32分~)。

分科会のメンバー見ると、原英史さんが決めてるんですよ。おかしいじゃないですか。利益相反じゃないですか。これが国家公務員だったら、斡旋利得、収賄で刑罰受けるんですよ

「収賄で刑罰受けるんですよ」という言葉は、通常なら名誉棄損にあたる。毎日新聞社は原氏との訴訟で、すでに原氏が金銭を受け取ったという主張を撤回したので、彼が公務員であっても収賄に問われることはありえないからだ。

ところが憲法51条では「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と定めているので、国会議員は質問の内容について刑事責任を問われない。

森議員が原氏の記事を読んだかどうかは不明だが、読んでいたとすれば国会議員の免責特権を悪用して虚偽の質問をした疑いがある。そこで原氏は、参議院議長に対して森議員の懲戒請求を出す署名運動を準備している。

これに対して森議員は苦しまぎれに「情報漏洩だ」などと主張しているが、官僚がツイートしたのは質問通告が期限を過ぎているということだけで、内容にはふれていない。質問項目は森議員が20:22に自分でツイートした。原氏が内閣府から受け取ったのは国会への参考人招致の資料であり、漏洩ではない。

本来は国会が自浄作用を発揮し、国民民主党が森議員を除名するなどの処分を取るべきだが、国民民主党の原口国対委員長は彼女を擁護し、自民党の森山国対委員長までそれに同調している。今の臨時国会の日程がきつく、野党が審議拒否すると、法案や補正予算が審議未了で廃案になってしまうためだ。

このように弱小野党が審議を遅らせて拒否権をもつ日程闘争が、審議を妨害して目立とうとするゴロツキ野党議員のはびこる原因だ。この問題を根本的に是正するには、政府が国会の日程を決められるように国会法を改正し、法案が会期切れで廃案になるルールを改める必要がある。

今回の騒ぎは、国会の病理を象徴する事件である。このような長時間労働を強いられるブラック職場を嫌って、もう中央官庁には優秀な若者は集まらない。国会が森議員を処罰できないようでは、官僚機構の劣化は止まらないだろう。