森ゆうこ議員の「質問通告」はなぜ深夜まで長引いたのか

池田 信夫

森ゆうこ氏ツイッター

官僚たちの反乱が始まったのは、台風19号が首都圏に接近している11日の深夜だった。「森ゆうこ糞」というアカウントをつくって経過報告した官僚(と思われる)は、午前0:52にこうツイートした。

これを産経新聞が報じたが、森議員はこう反論した。


最後にさりげなく「追加ペーパーは念のため提出」と書いている。これは別の官僚の深夜の証言とも符合する。


つまり最初の質問要旨は期限の17:00前に(国民民主党の国対から各省庁に)提出されたが、その内容は14項目の見出しだけだったようだ。その文面は不明だが、松井孝治氏が1年前に公開した蓮舫氏の質問のようなものだろう。


こんな項目だけでは中身がわからないので全省庁待機がかかり、各省庁が問い合わせるたびに森事務所から「追加ペーパー」が出された。それが終わって内閣総務官室が待機を解除したのが、23:50ごろだったという。これが「質問通告」の終了である。

この事実関係については森議員も官僚もおおむね一致しているが、そこに登場したのが原口一博国対委員長だ。


質問通告さえやれば、その説明(レクチャー)は「やらなくても良い」という。それをやっているのは「議員側の配慮」で、官僚が深夜まで待機したのは、やらなくても良いことを勝手にやっただけというわけだ。これが無責任野党の本音だろう。

昔は質問通告なしで、ぶっつけ本番の質問で政府側から失言を引き出し、審議を止めることがよくあった。これを恐れて役所が多くの官僚を待機させ、徹夜で「質問取り」をやって膨大な資料を準備していた。

こういう官僚の長時間労働が労働条件を悪化させ、若者が公務員を敬遠する原因になっているので、与野党の申し合わせで前日までに質問通告をすることになった。 それでも野党としては「爆弾質問」をしたいので、項目だけ通告する。

こんなやり方で、まともな政策論争ができるはずがないが、万年野党としてはそれでいいのだ。目的は政策論争ではなく、騒ぎを起こしてマスコミで名前を売ることだからである。特に予算委員会は暴れる最高の舞台だから、手の内は明かさない。

今回の森議員の行動は、国対委員長公認の質問通告の〆切破りである。これは今のような紳士協定で守らせることはできない。 国会法を改正して審議時間に制限をもうけ、野党の日程闘争を封じるべきだ。