財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています。
これについて重要な指摘とその解説を行います。
現中期防においては、各年度の予算編成を通じた歳出額の総額が記載されているが、新規後年度負担額については記載がない。また、装備品の数量は記載されているが、その単価については明らかとなっていない。(9P)
今回の資料ではこの後にも装備品の単価を明快し、かつ低減せよといっています。
現中期防期間中、それ以前と比較して、長期契約に基づく装備品のまとめ買いなどにより、新規後年度負担額が大きく増加。この結果、予算の硬直化を招くとともに、平準化されない形で歳出規模の増大を招きかねない状況。防衛関係費を適切にマネジメントするためには、次期中期防においても、新規後年度負担に一定の歯止めをかけていく必要があるのではないか。(P10)
これまで調達コスト削減ために、防衛省は「まとめ買い」を行い、それを財務省も認めてきましたが、それがあまり機能していないということです。そしてそれは「リボ払い」を増やして後年の防衛予算編成を硬直化させているというものです。故に調達単価を厳しく管理しろということです。
26中期防策定時の計画単価と実績を比較すると、多くの装備品において単価が上昇。次期中期防においては、国民に対する説明責任の観点からも、計画単価を明示した上で、ライフサイクルを通じたプロジェクト管理等を通じてこれを遵守するとともに、企業側のコスト削減努力を促し価格低減を図っていくべきではないか。
その際、単価が上昇する場合は、優先順位に従った調達数量のスクラップ&ビルドを徹底するべきではないか。(P11)
いつもぼくは申しておりますが、本来防衛装備は構想段階でコンセプト、調達装備に加えて調達数、調達期間、総予算を示すべきです。更に申せば本来ラインやジグを買うべき「初度費」が実は初度費ではなく、延々と何十年も払い続けることができるのも是正すべきです。
延々と払い続ける初度費で不良の改善などが行われています。本来受領を拒否するべき装備、例えばP-1は富士通製の電子光学センサーが不良で稼働率が低い。これの改良が「静の湯向上費」で計上され、また既存機の改修が「初度費」で行われている可能性があります。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自が調達する新型8輪装甲車、次期装輪装甲車の機動力は不整地走行能力がなく、舗装道路でしか運用できない96式装甲車と同等とされており、関係者の失笑を買っているとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年10月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。