韓国人観光客の減少で困るのはコリアン系ばかり?

八幡 和郎

あちこちのマスコミ媒体が、韓国人観光客の減少で日本経済への打撃が広がっていると根拠薄弱な記事を出している。しかし、本当に困っているのは、コリアン系の人や企業が主でないかという問題提起を、『ありがとう、「反日国家」韓国 – 文在寅は〝最高の大統領〟である! 』(ワニブックス)でした。

大久保のコリアンタウン(Wikipediaより:編集部)

たしかに、韓国人観光客が減ることで仕事が減った人は多いと思う。しかし、外国人観光客は増えているので、観光業界全体として困っているとは見えない

対馬とか別府とか韓国人にとくに人気があるところは若干の問題があるので対策が必要だ。しかし、普通はビジネスのなかで韓国人観光客への依存度が高い会社は、在日の方々や韓国企業が経営しているところが多いのではないか。

たとえば、韓国語の通訳などしている人について考えると、韓国生まれの韓国人、韓国籍や朝鮮籍の在日の人たち、それに日本に帰化した半島系の人をひっくるめてコリアン系と呼ぶとすれば、大部分を占めるだろう。

韓国で生まれて日本語を勉強した人もいるだろうし、日本の朝鮮学校の出身者もいる。日本の大学の韓国・朝鮮語学科についても、極めて大きな割合がコリアン系だと思う。

また、韓国史とか日韓関係を専門にしている人にしても、大きな部分はコリアン系だ。私が韓国史を勉強するようになって気がついたのは、日本で刊行されている韓国史についての日本語文献の多くがコリアン系によるもので、もっぱら韓国の一方的な言い分を擁護しているということだ。

もちろん、アメリカ史やフランス史の専門家もそれぞれの国を贔屓している傾向はあるが、それとは性質が違う。中国語や中国史の専門家も華人がほとんどなどと言うことはないのとは別の問題があるのだ。

韓国人向けの観光を組織している日本側の企業、ホテル、飲食店などにもコリアン系が多いと思う。

NHKのニュースに登場し、「韓国からの観光客が減って困っている」と話した旅行会社の経営者の日本語は、明らかに韓国訛りだったので笑えた。結局は自滅のブーメラン、まさにコリアン同士で天に唾しているということになる。

在日の方は日本だけでなく世界中で日本料理屋なども経営し、日本文化の普及に貢献されている。私がパリに勤務していたころ、トップクラスの日本料理屋のひとつは大阪で在日の方が買収された名門ホテルの経営だったが、頻繁に駐仏韓国大使の公用車が前に止まっていて、パリを舞台にしたコリアン同士の日本文化を通じた交流を興味深く観察させていただいた。

赤坂にはコリアンバーがたくさんあって、あのマレーシアで暗殺された金正男もお気に入りだったようだが、客も経営者も女性もコリアン系だ。

日本への観光客が減って、韓国の航空会社が経営危機というニュースも流れてくるが、勝手にやってくれという印象だ。

東京の大久保あたりのコリアンタウンは、もともと日本人の客が減って困っていたが、こんどの、韓国人観光客の減少で息の根を止められる店も多そうだ。

しかし、以上のようなことは、事実の積み重ねとしては間違いないが、統計的には分からない。国立大学の朝鮮語学科の学生のうちどのくらいがコリアン系か調べるのにはかなり面倒がありそうだ。

しかし、日韓関係の冷え込みで日本側にもひどい被害が出ているなどという前に、そうしたことも分からないのではおかしいのではないか。政府は、そういう実態を不完全でも調査すべきだ。それが分からずに、対策なんぞ立てられない。

逆に、日本側でも非コリアン系の韓国専門家を養成すべきだと思う。欧米ではルーツを秘密にする人はあまりいないから、たとえば、中東問題についてユダヤ系やらアラブ系の人がそれを隠してアメリカを非難することもない。テレビやマスコミで働いている人たちも隠れてなんぞしていないから、マスコミはユダヤ系に支配されている実態だってわかったうえで批判され、バランスがとれているが、日本では噂だけで、それが本当か嘘かも分からない。

NHKが職員のうち外国人の割合はと聞かれて、「調査してないので分かりません」といって終わりにしているのはおかしいと思う。

もちろん、韓国との関係ほど極端ではないが、中国との関係でも同様の問題がある。今後、その傾向が強まってくると思うから警戒したい。


八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授