台湾総統選挙は民進党現職の蔡英文氏が圧勝?米国も強力後押し!

高橋 克己

台湾紙中央社は「喜楽島連盟」の呂秀蓮候補が2日、来年1月11日の総統選挙への出馬を断念したと報じた。台湾独立を目指す同連盟は7月に結成されたばかりで立候補者推薦要件を満たさないため、有権者の1.5%(約28万人)の署名集めをしてきたが(※)、2日の締め切り時点で遠く及ばなかったようだ。

(※)関連拙稿:米中の場外戦も激化:台湾総統選挙がいよいよ本格化!

投票日までの日程から推して、推薦資格のある「親民党」や「時代力量」などがこれから候補者を立てる可能性は極めて低い。よって、総統選挙の立候補者は与党民進党現職の蔡英文候補と最大野党国民党の韓国瑜高雄市長だけとなり、二人の一騎打ちになることが事実上、確定した。

韓国瑜氏と蔡英文氏(Facebook、台湾総統府HPより:編集部)

選挙は各党の総統と副総統両候補セットで行われる。民進党の副総統候補は6月の立候補者指名選びを蔡英文氏と争った前行政院長で元台南市長の頼清徳氏になるだろうし、そうあって欲しい。一方の国民党副総統候補は、余すところ2カ月を切っているのに今のところ姿も見えない。

蔡氏と頼氏は2日、総統選と同日に実施される立法委員(国会議員)選挙に出馬する民進党候補者の応援のために訪れた台南で久々に顔を合わせた。頼氏は「台湾が第2の香港やチベットにならないよう第一線に立って蔡総統を当選させよう」と応援演説をしたそうだ。

蔡氏も壇上で頼氏に握手を求め、予備選終了後に蔡氏支持を表明し実行している頼氏への感謝を示し、支持者に団結を呼び掛けた。報道陣の取材に蔡氏は「肩を並べて戦うのは素晴らしい」、頼氏とは「団結している」と強調し、「適切な時期に最良のコンビを提示する」と述べたとされる。

台南市では同じ日に国民党候補の韓国瑜高雄市長の選挙活動も行われ、呉敦義主席(元高雄市長)や朱立倫前新北市長(国民党の万年総統候補)らが集まったそうだ。が、筆者も何度か本欄に書いている通り、高雄市長就任から1年経って韓国瑜氏の行政手腕のメッキがかなり剥がれたようだ。

アメリカ議会議事堂(Daniel Mennerich/Flickr)

そんな民進党の蔡英文総統を後押しするかのように、米上院は10月29日、「台北法」(TAIPEI Act)を承認した。同法は「台湾関係法」の再確認や「台湾旅行法」に沿った高レベル米国当局者の台湾訪問による台湾との公式非公式の関係強化、台湾の国際機関への参加支援などを謳っている。

法案中には「蔡英文の総統選出以来、中国は台湾への圧力を強化し」、「(8か国が)中国との外交関係を支持して台湾との外交関係を断ち切った」、「蔡英文総統によると、(これらは)中国による一連の外交的および軍事的強制行為の一部である」などと、祭英文総統の名が記された文言も見える。

ペンス米副大統領も10月24日の中国批判演説の中で、「米国は台湾と地域全体の平和を守る。台湾の民主主義容認が全ての中国人にとりより良い道と信じる」と、中国を非難する中で香港と共に台湾に触れた(※))。これも総統選挙に向けて祭英文氏への心強い支援になろう。

(※)参照拙稿:ペンス副大統領の中国批判演説、1年経ってどう変わった?

このように米国議会は、一方でウクライナ問題でのトランプ弾劾など与野党対立しながらも、人権問題では中国の圧力に苦しむウイグルやチベットや香港や台湾などを支援する超党派の議員立法を次々と通している。それに引き換え、我が国の国会議員の程度の低さは何だ。度を越してはいまいか。

これは与野党共に言えることで、森ゆうこ事態は論外に酷いとして、相変わらずの与野党の公選法や政治資金規正法などの違反暴露合戦、言葉尻をとらえての野党とメディアがタッグを組んだ閣僚おろし、些事や茶飯事を理由とした国会サボりなどに余念がない。「身の丈」発言に至っては教養すら疑う。

国内では人権人権と念仏のように唱える野党議員が、中国や北朝鮮の人権蹂躙を非難するのを筆者は聞いたことがない。自民党の日韓議連なども同じ穴の狢だ。内政は内政として対立して当然だ。が、外交では与野党が一致して足並みを揃え、中国や朝鮮半島の問題に対して我が国の主張を発信して欲しい。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。