ジム・ロジャーズ氏の「日本衰退論」に欠けているもの

著名投資家でシンガポールに住んでいるジム・ロジャーズ氏が「日本は東京五輪で衰退する」とコメントしている記事を読みました。

写真は3年前に来日した時に対談した時のものですが、当時から日本に対する悲観的な見方は一貫していました。

確かに、人口減少と高齢化は日本の大きな問題です。また、財政赤字は1000兆円を越え、GDP比で200%以上。もはや、インフレによってしか帳消しに出来ないレベルです。日本全体に対してはマクロで悲観的です。この点は、ジム・ロジャース氏と同じ考え方です。

ただし、ここで忘れてはいけないのは、日本と東京は必ずしも同じではないということです。

日本全体は、世界の中で地盤沈下していきますが、日本国内では東京への一極集中が進んでいます。

東京の人口流入は年間8万人と圧倒的で、外国人留学生・就労者の増加も東京が図抜けています。東京オリンピックは東京の再開発を加速させ、インフラの整備が更に東京の魅力を高めるというスパイラルを引き起こしています。

そんな東京の懸念は、オリンピック後ではなく、震災です。大地震や台風のような自然災害が発生した時に、どこまで被害を食い止めることができるのか。建物の耐震構造や、火災発生時の延焼の防止策など安全性を確保しておくことが重要になります。

また、東京の不動産が下落するもう1つのリスクは、金利の上昇と金融機関の融資姿勢の変化です。不動産投資は借入を使って行う投資家がほとんどですから、金利が上昇したり、金融機関が貸し出しに慎重になれば価格は下がります。

しかし、もし不動産価格が下がったとしても、居住用の物件の家賃は下げ渋り、利回りが上がっていくことになります。金利が上がったからと言って、賃貸生活者が一斉に退去することは考えにくいからです。

むしろ、東京オリンピックは外国人の東京への注目度を高め、人口流入を加速させる可能性が高いと考えます。外国人向けの生活インフラが整備され、魅力を高めていくことになるからです。

悲観論が好きな日本人にとって「日本衰退論」はマゾヒスティックな心地よさがあるのかもしれませんが、冷静に考えれば、別の視点が見えてきます。

■ 毎週金曜日夕方に配信している無料のメールマガジン「資産デザイン研究所メール」。メールアドレスとお名前を登録するだけで、お金の不安を解消するための具体的な方法をご紹介します。

■ 「初めての人のための99%成功する不動産投資」、シリーズ累計24万部となった「初めての人のための資産運用ガイド」など、今までに出版された書籍の一覧はこちらから。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。