高2のときに、私はSchottのライダースジャケットを買った。幼馴染がアルバイトで働いている近所のアメリカンカジュアルの店(アメリカ屋だったと思う)でセールで買ったのだが、4万円強だった。言うまでもなく、高校生にとっては高い買い物であり、それは社会人になるまで、自分で買った服で最も高い服であり続けた。しかし、ロックする上でのマストアイテムであり。さらには、ターミネーターからの影響もあった。
そう、『ターミネーター2』が公開されたのは、1991年、高2の頃だった。高校でテストを受けたあと、札幌の都心の映画館で観た。圧倒的だった。ガンズ・アンド・ローゼズによる主題歌もかっこよかったし。それから30回以上は観たのではないか。映画を観たあと、札幌の地下街ポールタウンを、まるでアーノルド・シュワルツネッガー演じるターミネーター風に無駄に胸を張って歩いたのを覚えている。
その後も「続編」と称されるものは発表され続け。もちろん、すべて観た。中には出演者やスタッフ、何より中身について「本当に続編と呼べるのか?」と酷評されるものもあったが、すべて楽しんだ。未来から敵とときに仲間がやってきて、ひたすら逃げ続けるという、V.S.O.P(ベリースペシャルワンパターン)であり。
ただ、特にこの10年くらいの続編については、1980年代、90年代に初期作品が公開されたときと事情が異なり。テクノロジーが発達し、「AIは人間の敵か味方か」という議論がカジュアルになっており。先日のNHK『クローズアップ現代+』でも取り上げられていたが、ドローンが攻撃する時代であり。実際、すでに私達の生活にもAIは入りこんできている。『ターミネーター』シリーズのような時代を私たちは生きている。
そのシリーズ最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開された。同シリーズの35周年記念作品だ。28年ぶりに製作にジェームズ・キャメロンが復帰。さらに、サラ・コナー役はもともと演じていたリンダ・ハミルトンを起用。アーノルド・シュワルツェネッガーも参加。
『ターミネーター2』の「正当な続編」という位置づけなのだそうだ。今までの作品は何だったのだと言いたくなるし、賛否を呼んだ「続編」たちについても楽しんでしまった私は複雑な心境ではあったが。
しかし、これはたしかに圧倒的な「正当な続編」だった。あらゆる点において。
公開2日目にTOHOシネマズ錦糸町オリナスでレイトショーを観た。ほぼ満員だった。私よりもさらに年上の人が多めだった。
あまりネタバレするのもなんだが、最初の数秒ですでに心を鷲掴みにされる。そうか、あの映像をこのように使うのか、と。
『ターミネーター2』においては、未来の革命家でありスカイネットから人類を救うジョン・コナーと、彼を生むサラ・コナーの親子愛もテーマの一つだったし、シリーズを通じて運命とどう向き合うかということが問われていたが。今回は「師弟愛」もテーマの一つであり。人類を救う(そうであるがゆえに未来からの敵に追われる)ナタリア・レイエス演じるダニー(ダニエラ)・ラモス の成長がナイスだし。それを救おうとして未来からやってきた強化人間グレースを演じるマッケンジー・デイヴィスの強さと優しさを感じさせる演技も圧巻だ。
この若い才能の起用はナイスだと思ったのだが、なんと言ってもリンダ・ハミルトンである。すっかり年齢を重ねた彼女だが、猛トレーニングを経て撮影に参加し。人間としての強さを感じさせつつ、良い枯れ方をしている。圧倒された。
アーノルド・シュワルツェネッガーも、人間味を感じさせる好演をしている。以前のような圧倒的な強さとは異なり、優しさに満ち溢れつつ、自分の使命を果たす。これまた、ナイスな枯れ方だ。
まあ、正直、最後に向けてのバトルシーンは手が込みすぎていたり、動きが速すぎたり、そもそも暗かったりして、何が起こっているのかわからない場面もあり混乱したのだが。とはいえ、圧倒的なスリル、迫力で、期待以上だった。
運命といかに向き合うか。機械とどう向き合うかなどと考えてしまったが。人間の強さとは優しさであり、円熟味を増すことであり、つながることだと確認した。さらに、運命を受け入れつつ、それを変えようとすることではないか、と。
1日研究室にこもり、行き詰まっていたあとということもあり。感動し、泣いてしまった。すぐに立てないレベルだった。
高2で観たとき同様、人生の教科書とも言える作品だった。またこのメンバーでの『ターミネーター』シリーズを観ることができるなんて。人生は悪いものでもない。
よかった。『ターミネーター:ニュー・フェイト』がある時代に生まれて、私は本当によかった!
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。