「歪み」からの収益は「インナーサークル」に独占される

不動産のような実物資産には、金融資産とは異なり、「歪み」からの収益が期待できます。

(写真AC:編集部)

「歪み」とは情報が一部の人たちだけに独占され、知っている人と知らない人の格差が生まれている状態です。株式や為替のようなマーケットで情報が共有されている資産には、この歪みがほとんど存在しません。短期的に解消されてしまうので、人を出し抜いて収益を上げることが難しいのです。

アクティブ運用の投資信託のファンドマネージャーがインデックスに勝てなかったり、証券会社のストラテジストの予想が2回に1回しか当たらないのは、仕方のないことなのです。

不動産の場合、有益な物件情報は、インナーサークル内でしか得られず、知っている人だけが超過収益を得ることになるのです。

歪みからの超過収益が狙えるのは、実物資産だけではありません。クレジットカードのポイントや航空会社のマイルも同じです。

クレジットカードによって、ポイント付与のルールに違いがあり、これが歪みを生み出しています。

例えば、納税ならこのカードで上限いくらまで、航空券の購入ならこのカードで上限いくらまで、と知っている人は効率的にポイントを獲得。

そして、そのポイントを今度は有利なやり方でマイルに交換して、航空券を低コストで手に入れているのです。

しかし、このような有利な交換方法が一般的に広がると、カード会社や航空会社がルールを変更してきます。すると、今まであった歪みが消えて、超過収益が得られなくなってしまうのです。

だから、この手の情報も本当に価値のある内容は、ネット上ではなくインナーサークルでやり取りされています。

ルールが改訂されればされるほど、例外が増えて仕組みが複雑化します。そうなると、知っている人と知らない人の情報格差は、さらに大きくなってしまいます。

歪みからの収益は、これからますますインナーサークルで独占されていくことになります。そして、インナーサークルの外にいる多くの人は、そんな情報が存在していることにさえ気がつかないで、毎日を過ごすことになるのです。

インターネットが普及すればするほど、インナーサークル情報に価値が生まれる。何とも不思議な「情報のパラドックス」です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。