他人の成功を祝福することは成功者の思考として考えられている。しかし、簡単なようでかなり難しい。人には妬みという感情があるからである。
あなたが営業部に所属する営業マンだと仮定しよう。あなたと、同僚のA君は営業成績で1位、2位を争っている。そのようなときに、A君が大型受注を果たした。あなたはA君の受注を喜ぶことができるだろうか。
もしくは、営業成績でビリを争っていたとする。ビリになったら降格・減給・配置転換はまぬがれない。そんなときに、A君が大型受注を果たした。あなたはA君の受注を喜ぶことができるだろうか。
表面上ではつくろっていたとしても内心は穏やかではないだろう。一方、A君が失注したらどうか。安堵はしないか、嬉しくはないだろうか?
私は社会人になってからコンサルティング会社でキャリアを積んできた。世界的に有名なファームで過ごしたこともある。コンサルティング会社は、業績責任の比重が大きい。成果が挙げれば役職も上がり報酬もうなぎ上りだ。
入社用資料には「他のコンサルタントはライバルだ」「ライバルを蹴落としても上にあがるべき」というスローガンが並んでいる。入社後もこのようなカルチャーが社内に根付いていた。社員も概ね同じような意識だったと記憶している。
在籍時、仕事が同僚とかぶったことがある。結果的には私がその仕事を受託した。同僚は、さぞかし意気消沈していると考えていたところ、心配は無用だった。「この企画は長年あたためていたので実現したかったのですが、これは神様が決めたことです。素直に応援しようと思います」。私は、それを聞いて大いに感服した、
私はその同僚を、メディアに紹介した。運よくテレビ出演を果たしトントン拍子に出版も決まり専門家として一躍有名になった。数ヵ月後、その同僚から大物財界人が参加すると評判のパーティに呼ばれた。
パーティには、ベンチャーの雄として有名なS社長も来ている。大勢の人が名刺交換に列をなしている。そのとき、S社長が私に気がついた。つかつか寄ってきて「先生お久しぶりです」。私は彼の家庭教師をしていたことがあった。
冗談ではなくこのようなケースはよくある話である。応援された人は、必ずその応援をあなたに返してくれる。これはビジネスの鉄則なのかも知れない。
多くの場合、理屈では分かっていても他者の成功を喜ぶことは難しい。これは、自分が所有していないものを他人が所有していないときに発生する感情だ。例えば、お金にひっ迫しているときにお金持をみたら羨ましいと思うだろう。もしさらに上を目指すなら正しいマインドを持つ必要がある。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※15冊目の著書『すぐやるスイッチ』(総合法令出版)を出版しました。