21年ぶりの弾劾訴追が可決!でも多分...

アメリカのトランプ大統領を弾劾訴追する決議案を21年ぶりに賛成多数で下院で可決されました。要するには一般的に言う刑事訴追されたというような事です。

というのも、ここで言う弾劾というのは、公権力を持っている人は身分を保障されている。しかし、その人に問題があった場合、議会がその人を有罪にするような手続きを行っているわけです。すなわち、アメリカの大統領は任期中に逮捕、刑事訴追、また有罪になったりすることがありません。ですから、議会か弾劾訴追、すなわち刑事訴追のような形をとったということです。

トランプ大統領は共和党系の大統領です。しかし今回は下院で多数を占める民主党がトランプ大統領の「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追をしました。その「権力乱用」とは、来年行われる大統領選挙に民主党の有力候補ジョー・バイデン氏(オバマ政権時の副大統領)がいます。このバイデン氏とその息子がウクライナで汚職の疑いがあったため、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に「捜査をしろ!」と圧力をかけた疑惑です。この圧力と引き換えに、ロシアと対立するウクライナへの軍事支援とホワイトハウスでの首脳会談を行ったと言われています。もし事実ならば、やはり「権力乱用」とも言えますが、決定的な物証があるわけではありません。

下院の勢力はこうなっています。

民主党の主導で今回の弾劾訴追が決定したわけですが、弾劾の手続きにおいて下院は訴追をする検事役です。そして上院がそれを裁く裁判所という役割になっています。

その上院の勢力はこうなっています。

 

共和党が過半数を占めています。弾劾する為には上院で3分の2の賛成が必要になりますから、共和党から20人以上が造反しない限り弾劾されない。ということはほぼ成立しません。

アメリカの大統領で、これまで下院で弾劾訴追された人は、2人います。
アンドリュー・ジョンソン第17代大統領(1868年に訴追)とビル・クリントン第42代大統領(1998年に訴追)です。二人とも上院で否決されました。

トランプ大統領はいろいろと問題がありそうですが、今回の弾劾訴追も民主党が来年の大統領選挙に並んだ政治的思惑でやっているという面が強いと思います。この数カ月、アメリカでは野党民主党、そしてメディアがトランプ弾劾に力を入れていました。日本でも他にやるべきことが山のようにあるのに、同じような攻撃が野党からありますけれども、アメリカもその点においては同じですね。

前回の大統領選挙でトランプ氏を支持したのは反エスタブリッシュメントと言われる人たちです。すなわち、日本だったら永田町の論理って言われるような政治の玄人が与党と野党が足の引っ張り合いばっかりやってるのに対して辟易している。ワシントンもある意味ではそういう部分があるということで、今回、大統領選前にトランプ大統領を傷つけようと民主党がしたわけですけれども、もしかしたらトランプ大統領に有利になってしまうかもしれません。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。