シェアリングエコノミー市場は、業界団体の調査で2018年度は1兆8874億円に達し、今後も順調に伸びれば、2020年度は最大で2兆5711億円、2030年度には11兆1275億円に達すると見込まれている。
参入障壁が低いこともあり、さまざまなスタートアップが挑戦しているが、外国に欲しいものがある依頼者と旅行者をマッチングし、両者の交渉が成立すると、旅行者は手荷物の空きスペースを使って依頼者に売るサービス「Hakobiya」が登場した。しかし「運び屋」を連想させるサービス名であることや、違法な物を運ぶ可能性もあることから、先週後半から土日にかけてネット上で物議を醸した。
ところが、このサービスのローンチが公表されたのは今年4月26日のことで(プレスリリース)、その当時は誰も注目しなかったが、先週半ばから急激にSNS上で話題になった。ヤフーのリアルタイム検索でも炎上の広がり方が唐突だったことがうかがえる。
なぜ、全くの「無名」ともいえたサービスが8か月近く経って急に注目されたのか。やはりメディアの存在が転機だった。ITmediaが12月18日にHakobiyaを紹介する記事を掲載。これを機にSNSで注目されるようになったようだ。
海外旅行のついでに“おつかい”で稼ごう「HAKOBIYA」が日本での展開に本腰
記事では、運営会社PicUApp側のコメントなどを載せており、利用者の多くがベトナム人であることや、ベトナム、日本それぞれの依頼者の人気商品などを紹介している。また偽物をつかまされるといったトラブルも想定される中、「両者のやりとりに介入し、解決を図る」とする同社の対策にも言及している。
しかしITmediaの記事が掲載された直後から、ネット上では波紋が広がり始めた。18日から19日の段階でもツイッター上では、
いや、税関申告書どう記載するんだよ、これ。ダメでしょ
ヤバい香りしかしねえよ
麻薬運ばされるのでは?
といった反応が散見。ただ、この段階では、炎上というほどの騒ぎにはなっていなかった。
局面が変わり始めたのは、やはりITや法律に詳しい専門家やネット上のインフルエンサーが言及するようになってからだ。
名古屋市で各種アプリ開発などを手がけてきた男性が19日午前、「これはヤバい予感しかしないな」と懸念したツイートが4ケタのRTをマーク。この頃から広がり始めた。
そして、「漫画村」訴訟などで知られる弁護士の山口貴士氏も同日夕方、「旅行のつもりが、年単位の海外生活を余儀なくされる日本人が続出しそう」と述べ、違法な物品を運び込み、異国の地で服役などの長期拘束のリスクがあると指摘した。
また、サービス内容を報じたITmediaの報道スタンスにも疑問や批判が噴出。中国ルポライターの安田峰俊氏は「一昔前ならジャーナリズムによって解明されたことが(例えばだが、窃盗品のベトナム持ち込みと相性いいサービス)、法律知らないライターとITメディアによって白日にさらされてしまう流れでは…」と呆れ気味に言及。
バズフィードジャパンの吉川彗記者も「違法薬物の密輸の片棒担がされる可能性があるから絶対やっちゃダメ。きちんと批判せずに持ち上げるような提灯記事を出したITmediaは相当ヤバい。」と媒体側を非難した。
シェアリングエコノミーは、ライドシェアリングの問題にみられるように、規制当局との調整は不可欠だが、ネットの波紋に政治家も注目。自民党衆議院議員で、外務政務官も歴任した武井俊輔氏は「これは極めて問題があります。外務省や航空当局の再三の注意にも反しています。対応は今後検討しますが、犯罪に巻き込まれることのないよう、強く懸念を表明します。」と投稿。
野党でも、日本維新の会の音喜多駿参議院議員が「偽物を摑まされたら…というトラブル対策が載っているが、そういうレベルではない犯罪行為に巻き込まれる可能性がある」と強い懸念を示していた。
与野党の政治家まで言及し始めたことで、週明けにも関係当局が何らかの動きを見せる可能性もありそうだ。