公共事業を増やして景気刺激は農業時代の発想

八幡 和郎

TicTac/写真AC

「成長促進のために景気刺激策を採れ」という人がいるが、短期の景気変動を調整することにはいいとしても、長期的な成長を促すために半永久的に財政赤字を続けながら景気刺激策を続けるなんていうのは、とんでもないことだ。

堅実な成長促進のためには、ミクロの産業競争力育成、将来の経済にとってプラスとなる質のいいインフラ、人材育成などをするしかないと繰り返し主張してきた。

さらに今回、言っておきたいのは、公共事業は昔と違っていい景気刺激策ですらないということだ。

公共事業が景気刺激策として意味があったのは、重厚長大の産業構造で、しかも、農業時代の発想だ。かつての日本では、農家が多く、さらにその後も、兼業農家が多かった。そして、兼業農家は景気が悪くなると兼業の収入を失った。だから、公共事業を増やすと日雇いでも仕事を得たから意味があった。

しかし、いまは、兼業農家も減っているうえに、生まれてこのかた農作業をしたことがない人が日本人の主流となった。

いまどき臨時で土木作業員をやりたい人がどこにいるのか。そんな少数派を前提にした施策なぞ、馬鹿らしい限りだ。もちろん、土木関係の仕事をフルタイムでやっているような人が失業してたいへんなら公共事業もおおいに結構だ。しかし、いまは、人手不足なのである。特に建設部門はそうだ。

いまや公共事業ふやしたら、外国人の不法就労を促進する意味しかない。


八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授