イランが7日夕方(日本時間8日朝)、イラクにある米軍のアサド空軍基地と北部アルビルの軍事拠点に数十発のミサイル攻撃を加えた。
イラン・革命防衛隊のスレイマニ司令官を米軍が殺害し、イラン側が報復措置に出た形だ。米国防総省の初期の発表では、人的被害がないというが、攻撃が夕方だったため、被害の全容は一夜明けないと不明な部分も残りそうだ。
トランプ大統領はツイッターで早速発信。「すべては順調だ!我々には世界最強の装備を持った軍隊がある」などと強気の姿勢をみせ、近く正式な声明を出すことを明らかにした。
トランプ大統領のコメントについて、国際政治学者で前東京都知事の舛添要一氏は「エスカレーションの梯子を登ってはならないが、双方が我慢できるか」と論評。
外務省在ウィーン国際機関公使などを歴任した、国際政治学者の秋山信将一橋大学法科大学院教授は「イランからの「両者撃方やめ」のシグナルを受け止めたというところでしょうかね。そうであればdeescalationの良い兆しかも」と一縷の望みを示した。
その秋山氏が、リツイートしたのが日本国際問題研究所の小谷哲男主任研究員のツイート。トランプ政権関係者の情報として、イランの攻撃が「わざと標的を外した可能性が高い」という分析を紹介、「鎮静化のチャンス」を指摘した。
実際、イランのザリーフ外相は「国連憲章の第51条に基づいて、防衛策を講じた。我々はエスカレーションや戦争を求めていないが、攻撃があればあらゆる自衛措置を取る」とツイートし、抑制的に対応している姿勢を示した。
ほかにも国際政治学者の鈴木一人北海道大学教授が「イランは米軍の軍事施設への攻撃に限定すると明言し、これ以上のエスカレーションを求めていないと訴えていること」を紹介。アメリカ側の自制の必要性を訴えていた。
一方、元陸上自衛隊イラク派遣団隊長で、前外務副大臣の佐藤正久参議院議員は「これら動きにより、原油価格やタンカーの保険料や運賃も上がるだろう。 攻撃された米軍も黙っていない、限定的な報復には限定的な反撃をするだろう。」との見方を示した。
マスコミでは全面戦争を危惧する論調が大勢を占めているようだが、「プロ」の見立てでは戦線拡大の可能性は抑制的、限定的なものになるといった冷静な意見が相次いだ。今後も海外報道も含め、事態を見極めていきたい。
【Update 9日2:00】トランプ大統領は8日(日本時間9日未明)に演説を行い、「アメリカは軍事力を行使したくはない。経済力こそが最大の抑止力である」と述べるなど、イランに対し、軍事的な報復はせず、今後は経済的な制裁をする意向を示した。