自分の資産を自由に動かせない日本の銀行

日本の銀行からの海外送金が、最近さらに厳しくチェックされるようになってきました。

akizou/写真AC

カンボジアに物件を保有していて、賃貸管理料を請求されたので、プノンペンの管理会社に送金をしようとしたら、物件を保有していることを示す資料(エヴィデンス)と請求書の明細を提出するように言われました。請求書は金額を確認するために必要ですが、所有権まで証明するように言われたのは初めてです。

知り合いの個人投資家の中には、海外送金自体を銀行から断られたというケースも出ています。

銀行が海外送金のチェックを厳しくしているのは、マネーロンダリングや反社会的な勢力への不法な送金を防止するためだと思われます。銀行自体ではなく監督官庁からの厳しい指導が入り、厳格なチェックをしないと処分を受けたりするリスクが高まっているからだと想像します。

確かに、使途が不明確な資金を海外の銀行口座に送金するのは不正や犯罪の温床になる可能性が高まります。エヴィデンスをしっかり確認して、使用使途を明確にしておくのは重要だと思います。

しかし、現状の日本国内からの海外送金は、煩雑で時間がかかり、個人投資家の投資意欲を低下させるような非効率な手続きになっています。個人の財産を所有者の意思で自由にスムースに動かすことができないのは、何とも不思議なことです。

海外送金だけではありません。国内の振込や現金引き出しに関しても、制限がかかっていて不便な事があります。

最近も税金の支払いを銀行からやろうとしたら、1000万円を超えているということで月次の利用額の上限に引っかかってしまい、手続きできないというトラブルに巻き込まれました。上限設定は、振り込め詐欺などの被害を防止するのが目的だと思われます。

納税出来ないと困るので、銀行の窓口に交渉して、一時的に利用枠を広げてもらうという緊急対応をしてもらって何とかなりました。上限金額を撤廃して欲しいとお願いしても銀行のルールだからできないそうです。これも何とも不思議なことです。

日本の銀行は、担当者は親切で優秀な方が多く、事務は正確で、間違えはありません。しかし、多くの手続きが非効率で手間と時間ばかりかかってしまいます。ハンコが無いと手続きできない「印鑑主義」も含めて、日本の銀行の「常識」は世界の金融の「非常識」。銀行窓口に行く度にそう感じます。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。