中東の緊張状態を受けて日本政府の動きも活発になっています。
安倍総理は先週11日から、サウジアラビア・UAE(アラブ首長国連邦)・オマーンの3か国を訪問しています。紛争当事国ということではありませんが、そもそもこの中東エリア全体が緊張状態にあり、サウジアラビアとイランは完全に敵対関係にある国です。
その意味で、アメリカとイランの関係がよりエスカレートしないように、また地域に広がっていかないように、歴訪国と意見交換してきたに違いありません。
菅官房長官も1/10の記者会見でこのように発言しています。
「今回の訪問では中東情勢が緊迫の度を高める中、事態のさらなるエスカレーションを避けるために外交努力の一環として地域の緊張緩和と情勢の安定化に重要な役割を果たす3か国と意見交換を行う。各国との間では、エネルギーの安定供給や、航行の安全確保に向けた協力を要請する予定だ」
安倍総理が日本を経つ前日の10日、防衛省で幹部会議が行われた、河野太郎防衛大臣が防衛省設置法第4条「所掌事務」の「調査・研究」として、護衛艦1隻と哨戒機2機の派遣を自衛隊に命令しました。具体的には護衛艦は海から、哨戒機は空から船舶の運航や海域の状況などについて、目視やレーダーなどで監視し、不審船や特異事態などの、情報収集する目的で、名目は調査・研究ということになります。
「中東」と言えば漠然としており、「アメリカとイランが対立しているそれが中東だ」と言われれば地球儀の中でかなりの面積を占めるわけです。今回、自衛隊が派遣されるアラビア海北部のアデン湾からオマーン湾のエリアは差し迫ったエリアではありません。それでもこの海域では過去に海賊行為が行われたり、またこの機に乗じて過激テロ組織が民間船舶に攻撃を仕掛けてくる可能性もありますので、監視をしなければならないということです。
日本はアメリカとは同盟関係、イランとは友好関係ということで、先ほどの海域はかなりバランスを考えた上でのエリアです。アメリカが呼びかけた有志連合には参加しないわけですが、この地域に独自に自衛隊を出したことで、いわば連携する協調姿勢をとったということです。一方で緊張か高まっているペルシャ湾には入っていかないことで、イランをたてたともいえるわけです。
当たり前ですけど、どちら側につけばいいという単純なことではなく、外交というのはバランスを考え、国益を考えて判断をしていくしかないわけです。
以前知っトク解説でホルムズ海峡についてお話しした時にも言いましたが、この地域は日本にとって、皆さんの生活そのものにとっての生命線なんです。日本が石油を100%輸入していることは誰だって知っているわけで、輸入の9割が中東からの輸入です。日本向けの石油を積んだタンカーが攻撃されたら一体誰が守ってくれるのでしょうか。あたりまえですけど、どんなに関係がよくても誰も守ってくれるわけないです。
国会は始まっていませんけれども、野党はこぞって自衛隊派遣に反対をしているようです。その理由は危険だから。
これに対して自民党の岸田文雄政調会長はこう言っています。
「米国とイランの緊張が高まっている中東海域において、日本の関係船舶の航行の安全を確保することは大変重要な政治の責任だ」
野党の立憲民主、共産、社民が反対しているのは別として、国民民主で誰か単なる反対ではないことを言う人いないのでしょうか?
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。