トランプ大統領への弾劾裁判、ブローカー・コンベンションの狼煙に?

トランプ大統領のウクライナ問題をめぐり、弾劾裁判が開幕しました。米下院が15日に弾劾手訴追決議を送付したため、16日から米上院に舞台が移った格好です。米大統領への弾劾裁判は1868年のアンドリュー・ジョンソン氏、1998~99年のビル・クリントン氏以来、3人目となります

Gage Skidmore / flickr

16日には、裁判長を務めるロバーツ最高裁判事が上院本会議場で宣誓したほか、陪審員役の上院議員が同意書に1人ずつ署名しました。冒頭陳述は21日の米東部時間午後1時から行われ、審理が開始する予定です。

気になる裁判の期間をめぐり、シューマー上院議員(民主党、ニューヨーク州)は「126時間」と予想していました。審理に丸1日掛けていた1998年のクリントン元大統領の弾劾裁判と同様であれば、約2週間、2月4日頃までに判決が下る見通しです。

シューマー議員の予想が正しくとも、民主党大統領候補レースに影を落とすこと必至です。なぜなら、予備選の到来を告げるアイオワ州の党員集会は、2月3日に予定しているんですよね。米上院議員であるサンダース候補やウォーレン候補などは、有力候補が選挙活動ができなくなってしまい、予備選で不利な立場となってしまうのですよ。

予備選のスケジュールは、以下の通り。

(作成:My Big Apple NY)

このような不利な状況でバイデン候補など米上院議員でない候補者が仮に予備選で勝利した場合、弾劾裁判の影響を受けた選挙戦を不服とする民主党員が、7月13~16日開催の民主党大会で「プログレッシブの乱」を引き起こさないとも限りません。

プログレッシブの乱が何かと申しますと、ブローカー・コンベンションです。民主党大会で1人の候補が過半数を獲得しなかった場合の、再投票です。仕組みはこちらをご参照下さい。

そうなれば、民主党内での混乱は必至となり、浮動票にも悪影響を及ぼしかねず。仮に混戦模様が続くならば、代議員の約3分の1を占める3月3日のスーパーチューズデーでも一本化の目途が立たず、民主党候補の間で選挙資金を含め消耗戦となるリスクが高まります。

トランプ氏をめぐる弾劾裁判が民主党内での炎上を招き、党内地盤を揺らし、むしろトランプ政権の追い風となりえます。選挙は水物ですけどね…。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年1月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。