ガスト、ジョナサンを運営するすかいらーくホールディングスが20日、全店舗で24時間営業を廃止することを発表した。24時間営業は、深夜帯を含むサービス業の労働人材の不足に端を発し、深夜帯の利用者離れと併せ、人件費高騰によるワンオペ操業など、近年、完全に負のスパイラルに渦巻いた業態である。これを機に国内の深夜営業廃止の流れは一気に加速するかもしれない。
既に都心では、これら24時間営業に限らず、近年では飲食店などの深夜営業もかなり縮小している。かつては深夜1~2時といった時間まで営業していたチェーン居酒屋なども、顧客、従業員が最終電車に間に合う23時近辺を閉店時間としている店舗が多い。これらの理由は、まず、深夜の客層が年々少なくなっていること、次に、深夜の働き手の不足、そして深夜営業のコストが合わなくなったことの3つが重なった結果といえよう。
また、店側のコストで言えば、深夜営業は、深夜のタクシー代と始発までの待機給の問題がある。現在では考えられないが、かつては長きに亘り、飲食店等の深夜営業店の多くが、深夜閉店後の始発待ち待機時間に対し、給与の支払いが一切行われていなかった時代がある。
現在なら、即時訴えられ、支払い命令が下され、ブラック企業として日本中に拡散され、瞬く間に閉店の憂き目をみることになるであろう。深夜営業の縮小の流れについては、店が先か、労働者が先か、客が先かは不明であるが、既にこれまでの「深夜市場」そのものが終わっていることは間違いないといえるであろう。
では、近隣アジア諸外国の深夜市場の動向はどうなっているかといえば、韓国以外のアジアでは、元々、地元民向けの深夜市場というものは殆ど存在していない。あるのは、外国人向けの深夜市場だけであったが、こちらも近年では縮小の一途を辿っている。また、これら既存の深夜市場の縮小の原因には、健康志向や、近年のライフスタイルの変化も影響があると考えられる。
しかし、消費者は寝ていない。既存の深夜市場が無くなったのは、決して、消費者の就寝時間が早くなったからではない。何が変わったのかといえば、人々の生活が、これまでの外での交流や消費を中心とした生活から、在宅での生活に重きを置く生活スタイルに変化しつつあるからだ。
その背景にあるのがニューデリバリー市場だ。新たなテクノロジーやサービスの進化などイノベーションにより進化してきた。具体的には、買い物はAmazon、飲食はUber Eats、娯楽はNetflixにYouTubeなどが挙げられる。
特に、デリバリーに必須である配達インフラが最初から存在した中華圏では、デリバリー市場の発展はすさまじく、在宅の非外出生活を存分に楽しむカタチが、既に年齢に関わらず、多くの市民に根付いている。ファーストフードやジューススタンドに列をして並ぶのは消費者ではなく、殆どが配達員なのである。また、同様にバイク・インフラがあるベトナムなどもニューデリバリー市場の成長は著しい。
配達インフラに人手不足などの問題を抱える日本では、遅れを取ってはいるが、東京などの都市部でも在宅生活に進んでいる可能性は高い。矢野経済研究所の最新調査(2019年9月)でも、国内食品宅配市場(18年度)は2兆1,399億円と、過去5年で10%以上の伸び率を示し、2023年度には2兆4,172億円まで伸びる見通しだ。
「24時間市場」は新たな時代に突入している。
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本元 勝 アジアM&Aコンサルタント