未来を予測するために:愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

BSフジの番組「この国の行く末2~テクノロジーの進化とオープンイノベーション~」(毎週土曜18時~18時30分)の先日の収録時、AI inside 株式会社(昨年12月25日東証マザーズに新規上場)の渡久地(とぐち)択社長が次のように話されて、実に素晴らしい人物だと感心しました。

20歳の頃(2004年)、年表を作った。「これから世の中がどうなるか」と考えて過去百年にさかのぼり、何年何月何日に何が起きた、多い日だと1日400項目くらい書き込んだ。過去を踏まえると、法則のようなものが見えてくる。量子コンピュータは2016年ぐらいに来る、とか。2030年にはガソリン車がなくなるだろう、とか…将来は「AI」と「宇宙」が大きなビジネスになると確信。特にAIは、2018年から2020年のあいだに、大きなイノベーションが起こることが見えてきた。ここに間に合わないと…と思ってやってきた。

将来を知るということは、ある面で事業の成功に繋がる重要な一つの鍵であります。そして未来を知る・将来を知る上で一番大事となるは、実は過去を知るということです。先月のブログ『先を読む』でも、『論語』の有名な一節「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」を御紹介しました。

あるいは、イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンは「将来に関する予言者の最善なるものは過去である」と、また、アメリカの政治家ジョン・シャーマンは「将来に対する最上の予見は、過去を省みることである」と述べています。「歴史は例証からなる哲学である」(ギリシャの歴史家D・ハリカウナッセウス)とは私も全くの同感であり、だからこそ私は事毎に『歴史・哲学の重要性』を説き此の2つを勉強するよう発信し続けているわけです。

貞観政要(国立公文書館HPより編集部)

例えば中国史上、貞観の治(じょうがんのち…唐の第2代皇帝太宗の治世、貞観時代の政治)と称される最も良く国内が治まった時代を纏めた『貞観政要』(…太宗と家臣たちとの政治上の議論を集大成し、分類した書)を読みますと、色々な意味で本当に参考になります。

此の書を「愛読」した日本の歴史上の人物に、北条政子・徳川家康・明治天皇が言われていますが、私は愛読といった言葉よりも「学んだ」と言う方が適切だと思います。徳川家康をに述べるならば、彼がしっかりと『貞観政要』を読み込んだ上、更にそれを講義させ研究していたのは、あの貞観の治の時代における理想的な政治が如何に齎されたかを知りたかったということでしょう。

当書にある有名な言葉「創業と守成いずれが難きや」が示す通り、創業には創業の難しさが守成には守成の難しさがあります。何れにしろ大事なポイントは、所謂「関ヶ原の戦い」迄の家来達とそれ以後「徳川三百年」の礎を創って行く家来達とでは能力・手腕の違う人間であるべきで、天下統一後の家康は国づくりのステージに適した家来を自分の周りに置くようにしていたということです。

また仕組づくりに関しても、彼は『貞観政要』に学び研究したのだろうと思います。オットー・フォン・ビスマルク(初代ドイツ帝国宰相)が言うように、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」のです。過去を知ることが如何に大きな意味があるのか――皆様も歴史に学ばれてみては如何でしょうか。

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