前代未聞のウィルス危機、私たちはどう立ち向かうか
中国・武漢市を中心に発生した新型コロナウィルスの被害。
相次ぐメディアの舞台となった中国・武漢市の人口はおよそ858万人ということで、東京のおよそ3分の2という規模を聞くにつけ、決して他人事ではないという思いです。
政府は即座に在留邦人の緊急避難に向けて民間チャーター機を準備するなど、意思決定の早さには素直に評価したいと思います。
わが国にとっても決して「対岸の火事」ではなく、今後が大いに心配されますが、ふと思い出すのは尾崎行雄の三女・相馬雪香さんの言葉です。
何よりも「困ったときはお互いさま」
これは半世紀以上にわたり、財団の副会長として尾崎財団を率いた尾崎行雄の三女・相馬雪香さんが生前、折に触れて口にしていた言葉でもあります。
あえて距離を置かずに相馬さんと呼びますが、かつて相馬さんはわが国を代表する国際NGO「難民を助ける会」を立ち上げ、インドシナ(現インドネシア)難民の救済に奔走しました。
行動の源泉となったのはカナダに住む友人からの痛烈な手紙で、そこにはこう書かれていたそうです。
「日本は同じアジアであるにも関わらず、インドシナ難民に全く手を差し延べていない。日本人は、なんて冷たいのか」
それを読んだ相馬さんは、こう返したそうです。
「日本人は、冷たくなんかない。これまで「困ったときはお互いさま」でやってきた。その思いは今でも日本に息づいている。今こそ、日本人の心意気を見せてやる」
友人には、啖呵を切る思いで返事を送ったと伝え聞いています。
日本のメディアに言いたい一言。「他国はどうなの」という思い
日本に生きる私たちだからこそ、国民の衛生や安全確保は急務であり、またトランプ流にいうならば「ジャパンファースト」であるのは当たり前です。その点は私も異論ありません。
その一方でわが国日本が、アジアの安定を他国以上に願い、またそれを体現実践する国であってほしいと願う身としては、自国しか見えない視野ではあって欲しくないという思いもよぎります。「優等生の度が過ぎる」という批判もあえて受けますが、発生源である武漢市のみならず、日本と同様に現地へ在留するアジア諸国の方々もおられることでしょう。
自国優先は第一としながらも、アジア諸国への配慮も政府としては見せていただきたい。そこは各国に駐在する大使閣下の役割なのかも知れません。
少なくとも「自国だけよければいいのか」、決してそうではないのだということを、政府に近いメディアの方々はぜひとも取材で明らかにしていただきたいと願います。
同時に、ある「個人的な思い」も脳裏をかすめます。
習近平主席の訪日を、どう迎えるか
これはあくまでも個人的な見解ですが、コロナウィルスの騒動が勃発する前の中国関連報道では、習近平・国家主席の訪日をめぐっての国賓待遇の是非が沸騰していました。
このような事態になった今だからこそ、あえて相応の待遇で迎える意味は決して少なくないでしょう。私はそう見ています。
日本海周辺の軍事的な脅威もあります、また香港や台湾への干渉など批判的な声も理解しています。
それでもなお、かつて相馬さんが「困ったときはお互いさま」、そう発した意味を噛みしめる一人として。安倍総理率いる日本政府には隣国として、最大の被害国であろう中国のトップリーダーとは呉越同舟の精神で臨んでいただきたいと願う次第です。その上で「未曽有のウィルス危機」に対しても、一致団結して事態に取り組む共同声明が出されることを期待してやみません。
アジアをはじめ、国際社会に対して日本は責任を果たすべき国なのか、あるいは「自国さえよければいい」そんな国なのか。
慎重なバランス感覚が求められることを意識しつつも、在留邦人の安心と安全を確保し、同時に周辺国にも同様の配慮がなされることを切に願います。
その上で「友遠方より来たる」の精神で迎えつつ、真の「隣国の友人」として、香港や台湾についても苦言を呈されたら良い。
それが是々非々の姿勢で臨む、外交のあるべき姿のひとつだと私は思うのです。