一週間ほど前、このブログで「経験則からすればある株価(=24,448円)を明白に超えればそこから加速度を上げて上昇する公算がある」という専門家の声をご紹介しました。ところが残念なことにその話をご紹介した24,000円程度直後から昨日までに1,200円幅の下落となり、先が読みにくくなっている状況にあります。
この「24,448円を明白に超える」という点が肝なのですが、そこを読み飛ばしておまえは株式市場に楽観視していると思われては困るのです。チャート分析はうそをつくこともありますが、あるポイントを明白に抜けるには市場で莫大なエネルギー(売買高)が必要になり、そこには当然、好材料が付随していないとそういうことにはならないわけでそれなりの裏付けはあるのです。
回りくどい言い方かもしれませんが、「そのポイントを超えられなければしばらくはチャンスは巡ってこない」ということでもあります。事実、長期チャート上はゴールデンクロスから遠ざかりつつあり、短期チャートはWトップという嫌な形になっています。
さて、こんな株価に誰がした、といえば新型肺炎であります。ただ、北米では地政学的なこともあり、株価動向の主因とはいいきれません。確かに患者は世界の各国で確認されつつありますが、欧米では各国、片方の指で数えらえる程度であります。日本でも大騒ぎですが、今日現在14名の感染者数で留まっています。幸いなことに緊急事態宣言がWHOから出たのでこれで無制限な拡大を阻止するという強いメッセージにもなりました。
ただ、世間が異様に騒ぎ、報道はそれ一色で人々が恐怖におののいているという感じに見えます。SARSの時も同じでした。あの時も株価はどんと下がりましたが終息が見極められる前から株価は戻り歩調になり、数カ月で回復しています。ですので今回の下げは絶好の買い場が到来しているとする向きは多く、いつ頃底打ちするのか、虎視眈々とその動向を見ている投資家は多いのです。
LVMH(ルイヴィトンなどの世界高級ブランド所有会社)のベルナール アルノー会長が同社の中国チームの報告からは「流行のピークは数週間後ぐらいではないか」と報告を受けていると決算発表で述べています。1月29日の話ですから2月半ばから下旬とみているのでしょう。
企業による分析は政府の分析と違い、より実態に近いことは多いものです。もちろん無責任な楽観は許されないのですが、着眼としては意味があります。政府は保守的にみる点において時間的ずれが生じるわけで投資家にとって非常に意味があることなのです。
さて、では株価に一番影響するアメリカ経済そのものはどうか、でありますが、10~12月のGDPは2.1%で着地。事前予想よりほんの少しだけ上回っていますが、内容が悪いのです。個人消費は7~9月期の3.2%から1.8%に、消費成長率も5.3%から1.2%に減速しています。企業投資も悪い内容です。10~12月が普通は消費が盛り上がる時期であることを考えると憂慮すべき結果と考えてよいでしょう。
ところがアメリカの金融政策決定会合であるFOMCでパウエル議長は再び間違ったメッセージを市場に送ってしまっています。「量的緩和は終わり」ととらえられる非常にテクニカルな策を打ち出しているのです。(「短期国債の購入ペースを緩やかにする」ということなのですがここでは説明は省略します。)
そのため10-12月の決算発表時期のさなかにある市場に微妙な空気が流れており、どちらかというと腰を折った形になってしまっているのです。トランプ大統領もパウエル氏を自分で選んで自分に後悔していると思います。この議長選任は明らかに失敗でありました。パウエル氏に市場とのコミュニケーションを取るというFRB議長として最も求められる能力が欠如しているのです。
アメリカは2月からいよいよ選挙の話題が中心となります。通常、選挙イヤーの株価は堅調とされます。一方で株価がすでにバブル的状態になっていることは多くの専門家が指摘していることで一部の銘柄はパンパンに膨れ上がっています。
このあたりを俯瞰すると中期的には新型肺炎問題で2月初旬から中旬まで調整、その後回復基調を辿り始め、5月ぐらいまでは順調に推移し、そのあとは乱高下があるかもしれないという個人的想定をしています。相場は相場に聞けという格言があります。読みずらいのですが、目先の材料の方向性がわかっている今は2~3カ月先までは与件に対する予想をはめ込めば読みやすくなっているともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月31日の記事より転載させていただきました。