レバレッジをかけた「資産3分法」ファンドは将来どうなるか?

日本経済新聞によれば、2018年10月に設定された「グローバル3倍3分法ファンド」という投資信託が人気を集めているそうです(図表も同紙から)。

ファンドの投資先は、約8割が株式、REIT(不動産投資信託)などの現物資産に投資されます。それだけではなく、約2割の現金を証拠金として活用して、TOPIX先物、国内外の国債先物をレバレッジをかけて投資する仕組みになっています。先物運用によって、投資資金の約3倍の実質的な運用規模になっています。

このファンドのメリットは、レバレッジ3倍で、信託報酬が実質年率0.484%(税抜0.44%)程度と抑えられていることです。レバレッジ3倍ですから、実質的な信託報酬は3分の1の0.16%程度になります。手持ちの資金が少ない個人投資家が少ない資金を低コストで効率的に運用する商品としては、悪くありません。

運用成績が好調なので販売も伸びているようですが、考えてみれば当たり前です。設定してからまだ2年も経過しておらず、その間は株式市場も債券市場もREIT市場も底堅い動きを続けています。

これまでの各投資対象のパフォーマンスを見ると、株式は国内外ともにほぼ横ばいで、収益に貢献しているのはグローバルな国債とREITになっています。これは、低金利が続いていることがプラスに作用しています。

今のような相場環境が続けば、引き続き好調なパフォーマンスが期待できます。しかし、レバレッジがかかっているということは、金利が上昇したり、株価に変調があれば、基準価額は相場の下落率以上に大きく下がる可能性があるということです。

また、「資産3分法」とうたわれていますが、アセットアロケーションに関しては、ほぼ固定されており、自分で自由にデザインはできません。更に、細かく見ると、先物による買いポジションをロールさせていく運用方法が、現物に比べどの程度のかい離があるかもチェックする必要があります。

これからマーケットの調整があった時に、想定外の大きな損失を被る可能性が高い。それを覚悟して、商品性をしっかり理解した上で購入している個人投資家がどのくらいいるのか。ちょっと心配です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。