国内より世界的パンデミックで東京五輪中止の可能性

八幡 和郎

新型コロナウイルス騒動で全国一斉の休校措置がこのタイミングで取られたのは、誠に適切なタイミングだったと思う。ともかく、大事なことは長期にわたってずるずるとコスパの悪い対策が続くことである。

これまで拙速にならずにそれなりに観光客も動き、今回の措置(学校だけでなく可能なところは学校などよりよほど断腸の思いで民間も休んでいる)で、なんとか、3月の終わり頃には、一段落して、例年ほど出ないが花見客もいて、ゴールデンウィークにはかなり回復、五輪から夏休みは完全回復というシナリオとすべく総理は勝負所と決断したのだろう。

これで、国民が危機感をもって行動してくれれば効果は早く出ると思う。医療体制もだいぶ整ってきた。

紆余曲折を経て五輪前年に開業した新国立競技場(Wikipedia)

しかし、東京五輪がはたして予定通り開かれるかは予断を許さない。というのは、日本では峠を越しても世界中に拡がっては開催できないからである。

国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は2月27日に次のように述べていた。

「推測や仮定の話には答えない。日本政府や大会組織委員会と緊密に連携し、選手や観客の安全を最優先に大会成功へすべての準備をしっかりやっていく」。

この言葉からは、早い時期に、東京五輪の延期や中止へかじを切ることはなさそうだということで一安心だ。

ただ、心配なのは、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、「パンデミック」というべき状態に近づいてきたことだ。そうなってしまうと、日本では状況が落ち着いても、世界中から選手や観客が東京に集まることが難しくなる可能性がある。日本側でもいったん終息した流行が、五輪を機にぶり返しても困る。

こう考えると、①「決行するなら、いつまでに結論を出すのか」、②「3カ月程度の延期はあるのか」、③「無観客試合は日本にとって受け入れられるか」、④「1年延期はどうか」、⑤「東京以外での開催はあり得るのか」など、さまざまな可能性をシミュレーションしておくべきだろう。

日本としては予定通りに開催できないなら、1年延期が好ましいような気もするが、あらゆる事態を想定して優先順位をつけ、日本側の希望のようにしてくれるならIOCとの交渉でどんなカードが出せるかなど、ある程度は、衆知を集めて検討しておいた方がいい。あまり細かく情報を流すこともないが、少人数でやっては知恵も出てこないだろう。

※夕刊フジの拙稿に大幅加筆