続・新型コロナウイルス雑感

北尾 吉孝

私は、此の見えざる敵すなわちコロナウイルスとの戦いも、企業経営者の競争相手との戦いと同じだと思います。何が同じかと言うと、『孫子』に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」とあるように、先ず敵およびマーケットを知らねばならず、そして自分自身も知らねばなりません。之をやることで、現状の問題点を把握し、対策を打つことが出来るのです。

現下のコロナウイルスに対する作業を見ていますと、全く現状把握が出来ていないというような感じがしてなりません。市場に出回っている数字は、例えば日経新聞(8日22時現在)でも「国内での感染者合計 479人」「8日に新たに判明した人 33人」「死者 7人」といった程度で、之では何も分からないでしょう。

日本の場合「指定感染症」扱いにしたものですから、PCR検査をし、コロナウイルスの保菌者だと分かれば、入院・隔離というのが定まっています。従って政府・感染研の人達は今日まで、それを出来るだけさせないようにしてきたのだと私は理解しています。何故なら、医療現場がキャパオーバーでパンクしてしまうからです。

そもそもが、指定感染症に決めたこと自体が早過ぎるのではないかと思っていました。では、どうすれば良いのかと言えば、例外規定を設けねばなりません。今はっきりしているのは、高齢者に重症患者が多く、若い人の大半は軽症であるということです。軽症者は入院する必要がなく、彼らまで入院・隔離しますと、医療が崩壊し重症者に十分な対応が出来ずに死者の増加を招きます。

先ず、適切なデータをとるためには、出来るだけの検査をし、全体の感染者数を把握しなければなりません。そしてその中から、例えば何時から何時まで何人増えているかを棒グラフあるいは折れ線グラフの類で見やすいものを作って、常に全体数と増分・減分が一見して分かるようにするのです。1ヵ月毎にその感染者数がどう変化しているか等々、棒グラフで全体を表したら増分・減分を折れ線グラフで表しているような見やすく・分かりやすいデータを作るわけです。

それからもう一つは、国内の感染者および退院者につき、その年齢レインジでグラフィック表示すると分かりやすいと思います。つまりは、何歳の人が感染し何歳の人が病院に入り重症化しているか、あるいは退院しているかということです。此の手の情報は、河野太郎防衛相がSNSで拡散しているのが、私は一番良いと思っています。その他は私に言わせれば、判断に困るだけ・不安を煽るだけのものだと思います。

具体的に河野大臣の昨夜のツイート「3月8日12時」を見ますと、「国内感染者」を「退院」「入院中」「陽性無症状入院」「死亡」にカテゴライズしています。また「入院中」を更に分け「軽中度」「人工呼吸/ICU」「確認中」「待機中」として、非常に分かりやすくなっています。此の「陽性無症状入院」などは、基本的に入院・隔離する必要はありません。但し、高齢者と同居しているような場合は此の高齢者と引き離す必要があるでしょう。

こういうデータをもう少し詳細に集めて、上記の通り累計と増分・減分の両方を盛り込む形で1ヵ月毎、少なくとも2、3ヵ月毎にグラフ化するのです。そして例えば、「入院中」の「軽中度」の人は入院・隔離する必要はないわけで、それをきちっと保健所がモニタリングをし、重症化するような兆候があれば直ぐに処置をして行くということです。「横浜で感染確認の70代男性、発熱後にスナックやジム利用」といった類のニュースが多数見られますが、現況の中で自分自身を律する気持ちがないような輩は昔で言えば「非国民」であります。此の戦いは戦争と同じだ、といった意識を持たねばなりません。

統計データをきちっと整備しない限り、状況把握は覚束ず適切な対策は打てません。故に検査キットを早急に輸入してでも、かかりつけ医が判断すれば検査出来るようにすべきだと思います。正確な情報を基に判断しなければ、可笑しな手を打つばかりです。今般の「全国一斉休校」の正誤も今の状況では分かりません。こうした判断を十分なデータなしに下すことは有り得ない話です。4月以降も患者数が増え続ければ、一斉休校を続けるのですかと問いたい。

米国では今や此のコロナウイルスを「武漢コロナウイルス」と呼ぶようになってきているようですが、当該認識に立って中国は全世界に正確なデータを公表し共有化する責任があります。中国が隠蔽しているか否かは不明ですが、之をやらない限り中国という国のイメージは益々悪くなって行くことでしょう。

さて、私は当社内で全役職員に告ぐという形で此のコロナウイルスに対する評価、即ち「之はリーマンショックを超える非常に大きな影響を与え得るものだ」という強烈なメッセージを早い時期に出しました。また私は、モーニングスターはじめSBI証券に対して、マーケットが下落したら逆に利益が得られる商品を出来るだけ御客様に取り揃えておきなさい、ということも随分早くから指示しました。これらは実際私の読み通りになっています。

我々の商売から見ればマーケットというのは、出来高急増によりSBI証券は連日大商いの状況に入っており、更に為替もボラティリティが非常に高まって之また大商いの状況になっています。片一方でアセットビジネスはと申しますと、殆どが未上場株なので大きな影響はないです。上場株は、ある意味それはナンピンの好機だと私は捉えています。戦略的買収をして行こうと考えている我々にとっては好機であって、現況は経営戦略的にはマイナスにならないと思っています。また、中長期のビッグピクチャーを描きながら、大きなマイナスにならないように経営をして行くべきだと、考えています。

マーケットが大きく回復するためには、ワクチンが使用出来るようになったとか、アビガンが効くといった薬の面での実績が必要だと思います。之があれば漠たる不安感がなくなり、インフルエンザと同じように扱われるでしょう。

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