なぜ倒産する会社が増えるのか?

中小企業の倒産が増えています。2月の倒産件数は651件で6カ月連続増となっていますが、3月以降この件数は更に伸び続けるものと予想しています。倒産の理由も人手不足が招いた倒産から売り上げの激減に伴うキャッシュクランチ型に変っていくものと思われ、特に地方の宿泊施設は自転車操業の足が止まることによる閉鎖が相次ぐ可能性があります。

(写真AC:編集部)

急激な景気悪化に対して企業は赤字対策ではなく、キャッシュフロー対策を取ります。先日もご紹介しましたが、リーマンショックの時、車を1台買うと2台目は無料となった話がありました。これなども在庫の価値を半分にしてでもキャッシュをねん出しないと給与や賃料、仕入れコストなどを払えないという企業活動の根本が停止してしまうのを防ぐ方策なのです。

旅館業の場合、投資過多というケースよりも、もともとが日々の運転資金のやりくり上の問題であることが多いとみています。つまり、客が来るときは大量に食材などを仕入れ、人手も確保するけれど、今回のようにぱたっと止まった際、食材は注文しないにしても人手の調整がすぐにできなかったり、固定費がかかり過ぎていていたりするのだろうと思います。また、自動車の在庫販売のように資産の切り売りができない弱点もあります。

それ故、このところの倒産は負債総額が非常に小さくなっていて1億円未満が全体の4分の3を占める状態になっています。

日本の場合、大半が中小企業でありますが、中小企業の弱点は経営者の能力が必ずしも十分ではなく、今回のように社会が激変した場合にそれに太刀打ちできなくなりやすいのです。つまり、普段はどうにか資金は回っているけれど何かあった際の対応や資金的体力が大幅に欠如しているのです。また、経営者がある程度の年齢になり、後継ぎ問題も抱えているような場合、引き継ぐ前にダメになるということもあるでしょう。

私は今回の新型肺炎問題で今後、倒産が激増するとみています。特に旅館業、飲食業、部品製造業など経営体力が劣る会社に厳しい試練が待ち構えているとみています。

倒産しないようにするにはどう体力増強を図るかですが、当たり前かもしれませんが、ある程度のキャッシュは手元に置いておくべきでしょう。私は3カ月分の運転資金を一つの目安に考えています。つまり、今日から3か月間、売り上げがゼロでも耐えられる程度のキャッシュは確保するのです。こんなこと言うと反発があるかもしれません。ただでさえ薄利多売なのにそんな夢みたいなこと、それだけあれば俺の給与を払ってもらう…などなど言い分はあるでしょう。しかし、それが健全経営なのです。

先日、日経に「がっかりだよ……キャッシュレス決済」という記事があり、その中身は少額決済では使えない、ランチタイムは使えないという不満でした。一方、店側の言い分は3~4%にもなるサービス手数料がばかばかしくて対応できないというものであります。つまり、最近の便利なサービスは導入せざるを得ないけれどコストが非常にかかる体質であり、いつの間にずいぶん経費を払っていたということなのです。

3~4%だろう、というのか、1000円で3~40円もかかるというコスト意識を持つのかで全く違ってきます。私は当地でクレジットカード会社と0.1%単位の値引き交渉をして少しでも経費を下げようとしています。

ある意味、日本にはゾンビ的な中小企業は多いと思います。時折、日本の地方に泊まりに行くのですが、よくこんな宿泊施設、経営できるな」というところはびっくりするぐらい多いのです。が、訪日外国人で支えらえて延命したといえるのでしょう。今年の訪日外国人は4000万人の目標に対して半分に届かないかもしれないという弱気の見通しも出てきています。

中小企業には大いなる試練が続きそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月11日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。